2007年05月16日(水) 08時34分
サーベラスがクライスラー買収 “ハゲタカ”返上に懸命(フジサンケイ ビジネスアイ)
■表舞台で問われる真価
米独自動車大手、ダイムラークライスラーの北米部門クライスラーを買収することになった米投資ファンドの「サーベラス・キャピタル・マネジメント」。日本国内でも経営破綻(はたん)した旧日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の買収など活発な投資活動を繰り広げているが、米国でも投資ファンドがビッグスリーの1社を傘下に収めたことに衝撃が広がっている。
サーベラスは、ギリシャ神話に登場する3つの頭を持つ「地獄の番犬・ケルベロス」の英語読み。英経済紙フィナンシャル・タイムズはニューヨーク発の記事で、「サーベラスが影の世界から抜け出した」との見出しを付け、神話の世界の怪獣が現世の表舞台に登場したと報じた。
サーベラスは、スティーブン・ファインバーグCEO(最高経営責任者)が1992年に創設。当初は高金利の消費者金融事業を手がけていたが、経営不振や破綻に陥った企業を買収し、再生し上場や転売で利益を回収する企業再生に進出。現在では運用資産額165億ドル(約2兆円)に上る米国7位の投資ファンドに躍進した。
日本にも10年前に進出。旧日債銀買収のほか、国際興業や西武ホールディングスの再建にからみ出資するなど、企業再生分野で実績を上げている。
ただ、再生の見込みのない企業は事業を切り売りするなどの手法を取ってきたため、“ハゲタカ”のイメージもつきまとっている。
また、世界最大の投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やブラックストーン・グループなど運用資産額が5兆〜10兆円に上る上位ファンドには大きな差を付けられているのが実情。
ブッシュ政権下で財務長官を務めたジョン・スノー氏を会長に招聘(しょうへい)したほか、父親のブッシュ政権の副大統領だったダン・クエール氏を顧問に招いており、「イメージの刷新と実績拡大を狙った箔付け」(外資系証券)といわれている。
米国ではサーベラスに限らず、ブラックストーンが2月に230億ドル(約2兆7600億円)で大手不動産のエクイティ・オフィス・プロパティーズ・トラストを買収。KKRも320億ドル(約3兆8400億円)で大手電力卸TXUを傘下に収めるなど、世界的なカネ余りを背景に巨額の資金を集める投資ファンドが、大型M&A(企業の合併・買収)の牽引(けんいん)役になっている。
クライスラー買収で14日に記者会見したサーベラスのスノー会長は、「本格的に長期の再建を目指す」と述べ、目先の利益にとらわれない姿勢を強調してみせた。
もっとも、クライスラー再生をめぐっては、難題が山積で、サーベラスが投資利益の回収を優先する投資ファンド本来の姿に戻り、切り売りなどによる早期回収に転じる懸念はぬぐえない。
日本国内の投資案件でも昨年、あおぞら銀行の株式上場を実現したが、その後、株価が低迷するなど、市場の見る目は厳しい。表舞台に出てきた「地獄の番犬」の真価を見極めるには、まだ時間がかかりそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070516-00000006-fsi-bus_all