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4月に全面施行された個人情報保護法の影響が、介護の現場にも及んでいる。介護施設が入所者の病状を医療機関から教えてもらえず支障をきたす一方、介護施設が入所者情報を自治体に出し渋るケースもある。情報が共有されなければ、被害を受けるのは最も弱い立場の入所者だ。厚生労働省では「常識で考えてほしい」とクギを刺している。
東京都国立市の高齢者福祉施設に勤務するケアマネジャー、星野千尋さん(28)は今年になって、医療機関の対応に当惑することが多くなった。
今春、認知症の高齢者が共同生活を営むグループホームに入居している女性を、肺炎の治療に病院へ連れていった。医師に病状や今後のケアの注意点を尋ねたが、「個人情報だから家族にしか話せない」と拒まれた。女性は受診のため朝から水分を取っておらず、補給して良いか確認したかったが、それさえ出来なかった。あとで家族を通じ、何度も病院に聞いてもらわなければならなかったという。
夏には、デイサービスを利用する認知症の男性が嘔吐(おうと)し、体の震えもあったため、急いで近くの病院に連れていった。同時に服用してはいけない薬もあるため、男性のかかりつけ医に電話でふだんの服用薬を尋ねたが、「本人か家族でなければ教えられない」。星野さんは、「本人が認知症の場合は答えるのは難しく、家族に連絡がつくまで教えてもらえないなら、急病の時にどうするのか」と心配している。
NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」(東京)の理事長、本間郁子さん(57)は10月、ケアマネジャーの女性から、「骨折で入院した施設入所者が退院する際、これまでは教えてくれていた病状を『個人情報だから』と教えてもらえなかった」と相談を受けた。
高齢者の骨折は完治に時間がかかり、ある程度治れば退院することが多いため、状態をきちんと把握していないと移動や入浴の際に適切な介護ができない。「介護に必要な情報は、ふだんケアにあたる人が病院とやり取りをしないと分からない。必要で質の良いケアができなければ、個人情報保護の意味もないのではないか」と本間さんは話す。