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2005年12月26日(月) 02時57分

高野ケーキから球菌 23日把握、公表に遅れ産経新聞

 高級フルーツパーラーで有名な東京・新宿の「新宿高野」が販売したクリスマス限定ケーキから食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が見つかっていたことが二十五日、明らかになった。ケーキは「森永エンゼルデザート」のデザート事業部(横浜市)に製造委託した製品で、新宿高野はこの事実を二十三日に把握し直ちに販売は中止したが、既に購入していた消費者へは特に対応はしなかった。健康被害はこれまで報告されていないが、かき入れ時のクリスマイブの日(二十四日)の公表を避けたとの見方もあり、「食の安全」に対する企業倫理の欠如ぶりと消費者無視の姿勢に批判の声が上がっている。
 両社によると、問題のケーキは二十一日に製造された手作り生ケーキ「マロン・ド・ノエル」(一個三千百五十円)四百三十本から、森永が行った抜き取り検査で二十三日に発覚。原材料のマロンクリームか、手洗い不足などで人の手を介して球菌がケーキに付いたのが原因とみられる。
 森永は二十三日正午すぎ、新宿高野に「四十八時間の検体検査で球菌の数が基準値以上、見つかった」と連絡。新宿高野は店頭に陳列していたケーキは回収したが、予約者ら既に購入した消費者には特に連絡するなどの対応はしなかったという。同社によると、販売されたケーキは最大で八十個ほどとみられる。
 同社がようやく販売されたケーキの回収を始めたのはクリスマスの二十五日午後。しかし、購入先が分かる予約者のみで、管轄する保健所への報告も同日午後だった。
 新宿高野の幹部らは「ケーキを食べてもすぐに球菌で食中毒になるレベルではなかった。正式に森永から書面で球菌の見つかったいきさつなどを受け取り、具体的な検査結果を確認するのに時間がかかった」と釈明。その上で、「百二十年の会社の歴史で初めての事態。決してかき入れ時のクリスマスシーズンを避けて公表しようとしたわけではない」と隠蔽(いんぺい)の事実は全面的に否定した。
 しかし、一方で、「危機意識が甘いといわれても仕方ないが、公表すれば森永にとっても新宿高野にとっても信用問題でダメージになる。保健所に報告するためにも書式を整えるのに時間がかかる。うかつだった」と対応のまずさを認めている。
 同社は、三年ほど前から繁忙期のクリスマスシーズンは森永に生産を依頼していた。
 森永では他のケーキも製造しているが、今回の「マロン・ド・ノエル」以外には問題はないとしている。
     ◇
≪「クリスマスには子供も食べるのに」/店頭に告知なく/「耐震偽装と同じ」≫
 東京・JR新宿駅東口を出てすぐ目の前にある新宿高野新宿本店。地下二階にある「フーズギフトフロア」はクリスマスの二十五日、入り口前にも出店し、ふだん通りに買い物客でごったがえしていた。パンやケーキを販売する店内では、黄色ブドウ球菌が検出された問題の「マロン・ド・ノエル」はすでに店頭になかったが、今回の菌検出を告知する張り紙もまだなかった。
 「その商品は売っておりません」
 買い物客が、マロン・ド・ノエルを購入したいと尋ねると、サンタクロースの格好をした女性店員は一言。その後、ポケットからメモ帳を取り出して「この電話番号にかけてください」と事務的な対応だった。
 電話しても、女性の担当者は「なぜここにかけるんですか。売り場で売っていないのなら、(在庫が)ないということでしょう」とピシャリ。十分な説明はこちらでもなかったという。
 同店に買い物に来て、職場にケーキを配る予定という都内在住の清掃作業員(69)は、「言いたくないことをできるだけ隠すのは(マンションなどの)偽装問題と同じ。やることが汚い」と同社の対応を疑問視した。
 山梨県の主婦(51)は「そんな話を聞くと嫌な気分です。これから食べるのであまり気にしないようにします」とあきれた様子だった。
 危機管理コンサルタント会社「リスク・ヘッジ」の田中辰巳代表は「口に入るものを扱う食品会社は常に最悪のケースを予想し、“李下に冠を正さず”という姿勢が必要だ。クリスマスケーキは子供やお年寄りも口にするので、健康な大人なら平気な場合でも大変な健康被害をもたらすことにもなる」と指摘する。
 新宿高野の対応についても「新聞などでの告知は被害拡大を防ぐために行うもの。クリスマスが終わった後に告知したとしても、まったく意味がない」と批判。「ブランドイメージをこれ以上傷つけないためにも、被害者が名乗り出たら、できる限り誠実に対応するとともに再発防止に全力を注ぐべきだ」と語った。
(産経新聞) - 12月26日2時57分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051226-00000012-san-soci