2005年12月15日(木) 00時00分

耐震強度偽装事件の張本人、姉歯秀次元一級建築士がようやく姿… （東京新聞）

　耐震強度偽装事件の張本人、姉歯秀次元一級建築士がようやく姿を見せた衆院国土交通委員会の証人喚問。「最初はグランドステージ池上でした」の証言に、住宅地図を確認して驚いた▼子どもたちがまだ小さかった一九八〇年代に、七年暮らした東京・池上のアパートのすぐそば、子どもと一緒によく頭を刈ってもらった床屋さんのあった場所ではないか。記憶をたどりながら、十六年ぶりに現地を訪ねてみた▼池上本門寺に近いこのあたりは都心にも近く、本門寺の五重塔や墓地公園の桜が美しかった。子どもが通った隣の幼稚園は山の上の園舎からふもとの玄関まで長い滑り台で下りられた。秋にはドングリ拾いも楽しめ、理想の子育て環境だった▼問題のマンションは、日々の買い物や通勤路だった商店街の床屋さん、和菓子屋さん、魚屋さんのあった場所に鉄筋九階建てで立っていた。昔のまま残っていた食料品店で顔なじみのご主人に聞けば、床屋さんは少し離れたところに移って商売は続いているといい、安堵（あんど）した▼お店を捜し当てて入ると、老夫婦と若主人がよく覚えてくださっていた。ついでに散髪も頼み、昔話と近況に話が弾んだ。移転前後には地上げをめぐるトラブルもあったようだ。今となっては下駄履（げたば）き店舗で入居する話に乗らなくてよかったと▼住まいとは、家だけではなく周りの街をも指す。池上を気に入って購入したマンション被害者たちの無念は、大事な子育て期を含む人生を台無しにされたことだ。国会で責任逃れを並べ立てる証人たちには心底腹が立った。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20051215/col_____hissen__000.shtml