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「偽装を始めたのは1998年ごろだったと思います。きっかけは木村建設の東京支店長に相当なプレッシャーをかけられたからです。(偽装は)記憶では60件前後行ったと思う」
姉歯氏は委員長質問にこう答え、「断ると生活できなくなるからです」と偽装の動機を語った。
姉歯氏は14日午前8時40分ごろ、1人でタクシーに乗って国会に到着。黒系のスーツに黒のチェック柄のネクタイ姿で、数十人の衛視や報道陣に囲まれながら、無言のまま証人喚問が開かれる第1委員室脇の控室に入った。
これまでテレビなどのインタビューに答えていた髪形と異なり、7・3分けで登場。ストレスから激太りしたのか、二重あごが目立っていた。
姉歯氏はこれまで、無責任な発言を繰り返してきた。
「偽装は21件。あとは覚えていない」
姉歯氏は聴聞会でこう答えていた。だが、14日までの国交省の調査によると、姉歯氏の関与が判明している物件は22都府県の計209件で、17都府県で71件の偽装が確認された。
「私だけでは背負いきれないし、私だけの責任ではない」。偽装が発覚した直後、姉歯氏は報道陣を前に、マンション住民らへの損害賠償について、こう平気で言ってのけた。無責任発言は住民を激怒させたが、姉歯氏の口から次々と出る重要証言は事件の深刻さを浮き彫りにしていった。
聴聞会で姉歯氏は、木村建設元東京支店長から建物の鉄筋量を減らすよう再三にわたり指示されたことを暴露。要求を拒否すると「よそに回すよ」と“脅し”を受けたことや、リベートまで支払わされたことまで明らかにした。
一連の耐震偽装をめぐっては、“黒幕”の内河健所長(71)率いるコンサルタント会社「総合経営研究所」(総研)を頂点に、建設会社、検査機関、姉歯氏が「共犯関係」となったピラミッド型の構図が次第に鮮明になっていった。しかし、姉歯氏は、構造計算書を発注してきた森田設計事務所代表の自殺にショックを受け、精神的に不安定な状態に。
衆院国交委参考人招致、千葉県の聴聞会の計4回を欠席。最近は都内のホテルや知人宅を転々とする“放浪生活”を送り、携帯電話の着信にもほとんど応じないようになった。証人喚問に出頭する意向を衆院事務局員に伝えた場所も、本人の強い意向で明らかにされていない。
その間、開発会社「ヒューザー」の小嶋進社長(52)、民間検査会社「イーホームズ」の藤田東吾社長(44)、総研の内河所長が会見やテレビ番組に次々に登場し、罪のなすりつけ合いの泥仕合を演じてきた。
姉歯氏の素顔もマスコミに暴露されていく。幼いころに父親が蒸発し、母親に女手ひとつで育てられたという生い立ちや、病気がちな妻がいるといった不幸な側面も明らかになった。
特に注目されたのは、ヒューザーの小嶋社長との「上下関係」だ。
姉歯氏も小嶋社長も宮城県古川市出身。小嶋社長は姉歯氏と出身校は違うが、古川出身のゼネコン関係者に多大な影響を持つとされる。そんな小嶋社長に「(偽造を)指示されたら、姉歯さんも断れないはず」(地元の自営業男性)といった苦しい立場も露見した。
後輩から逆に影響を受けたのか、小嶋社長も“行方不明”に。問題が発覚した当初は、ワイドショーや報道番組をはしごし、「全額補償します」「(姉歯氏を)頭のおかしい人」と言いたい放題で、国会でも藤田社長に「いいかげんにしろ」とヤジを飛ばすなど責任逃れに躍起となっていた。
だが、今月初めからは、偽装マンションでの住民説明会も「命の危険があるから」「資金繰りに忙しい」といった理由で欠席を繰り返すようになり、ますます住民の反発を買っていた。
結局、当事者の大半が入院や所在不明となり、真相を語る証言はなくなっていった。
国交省による偽装問題や住民への補償も進まないなか、今週末には警視庁など合同捜査本部の強制捜査が行われる。捜査本部では、建築基準法違反容疑のほか、詐欺や文書偽造容疑も視野に調べを進める。
司直の解明の前に、姉歯氏や内河所長の口から何が語られるだろうか。
ZAKZAK 2005/12/14