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自衛隊が映画やテレビドラマに登場する機会が増えている。かつては怪獣映画でゴジラなどに蹴(け)散らされるさえない役回りが多かったが、最近では「主役級」を演じることも多くなった。作品も戦争映画や災害映画などだけではなく、民放のトレンディードラマにまで広がっている。エキストラ出演した隊員も「まさか自衛隊に入って恋愛ドラマに出ることになるとは」と、時代の変化に驚いている。
11月上旬の朝、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)。1973年公開の大ヒット映画「日本沈没」のリメークで、来夏公開の同名作品のワンシーンが撮影されていた。
沈みゆく日本列島から避難するため、自衛隊のC—1輸送機に殺到する人々を、エキストラ出演の空自隊員が「走らないで」と誘導する。午前9時に始まった撮影が終わったのは午後6時半。長時間の“任務”を全うした隊員は「大作に参加できてうれしい」と汗をぬぐった。
配給元の東宝宣伝部担当者は「現実感のあるフィクションに仕上げるためにも、本物の映像は不可欠だった」と自衛隊起用の理由を説明する。ちなみに自衛隊側は「訓練の一環」として、協力の対価を一切受け取っていない。
自衛隊員が戦国時代にタイムスリップする、今年6月公開の映画「戦国自衛隊1549」。79年にヒットした「戦国自衛隊」のリメークで、前作では「ストーリーが荒唐無稽(むけい)」と出演を拒否した防衛庁だが、今回は「国民を守るという自衛隊の役割がアピールできる」と全面協力した。
東京・市ヶ谷の防衛庁庁舎内には、このほか「亡国のイージス」「男たちの大和/YAMATO」など自衛隊が協力した映画やドラマのポスターがあちこちに張られている。
中でも職員の間でひそかに人気が高いのは、女優の矢田亜希子さんが主演し、今年4〜6月にTBS系で放送されたテレビドラマ「夢で逢いましょう」の一枚。長塚京三さん演じるヒロインの父は海上幕僚監部広報室長の1等海佐という設定で、一人娘の結婚を巡る武骨な父の複雑な思いを描いた作品だ。TBS宣伝部は「長塚さんに海上自衛官の制服を着せたら格好いいだろう、という発想だった」と屈託がない。
エキストラ出演した広報室の小俣泰二郎3等海佐(34)は、「自衛隊に入って、まさかトレンディードラマに出ることになるとは」と感慨深げだ。
海外に目を転じると、ハリウッドに対する米軍の手厚い協力ぶりが有名だ。極端に反軍色の強い作品を除き、全面的に軍が協力するケースが多い。陸軍はハリウッドに広報事務所を置き、映画スタジオとの交渉にあたるという力の入れようだ。
軍側のメリットも大きい。トム・クルーズがF14戦闘機のパイロット役で主演した「トップガン」の大ヒットで、一時、パイロット志願者が急増したという話もある。
韓国軍の場合も、映画会社から依頼があると、軍を侮辱・否定する内容でなければ協力するという。
自衛隊が創設された54年は、くしくも映画「ゴジラ」シリーズの第1作が上映された年。怪獣映画で自衛隊が最初に登場したのは56年の「空の大怪獣ラドン」だった。超音速で飛び、衝撃波を起こす翼竜ラドンが九州に出現。最初は苦戦した自衛隊が空と陸から反撃、阿蘇山火口で撃退するストーリーだった。
その後、自衛隊は娯楽映画の常連となり、60年には国会で「無料で協力するのは問題だ」などと野党議員から突き上げられる一幕もあった。しかし70年安保などを背景に、自衛隊の映画出演は激減。「国民の間に『自衛隊アレルギー』が広がり、メディア側も自衛隊を敬遠した」と軍事評論家の江畑謙介さんは指摘する。
スクリーンへの登場が再び増えてきたのは冷戦終結後の90年代以降。「特に95年の阪神大震災での活動やPKO(国連平和維持活動)などの国際活動を機に、拒否反応が少なくなってきたのだろう」と江畑さんは見ている。
防衛庁にはすでに、来年の撮影・収録に向けて、映画会社などからの協力依頼が寄せられているという。
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(協力年度のため公開・放映年度とは異なる) 最近の主な防衛庁協力作品 1999年ゴジラ2000ミレニアム 守ってあげたい! 2000年サトラレ 01年愛と青春の宝塚(TVドラマ) パコダテ人 02年ゴジラ×メカゴジラ 03年ウルトラマン ザ ネクスト 04年戦国自衛隊1549 亡国のイージス 05年夢で逢いましょう(TVドラマ) 男たちの大和/YAMATO 祇園囃子(TVドラマ) 日本沈没