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2005年12月08日(木) 00時00分

耐震偽装見逃す下地あった、検査機関のいい加減ZAKZAK

需要急増、16年度は検査数が行政上回る

 「偽装を見逃す“下地”はあったかもしれない」。都内の建設設計会社に勤める1級建築士(33)は、検査機関の不備をこう指摘する。

 マンションやホテルなどの建設にあたり、ゼネコンやデベロッパーなどの建築主は、建築計画を記載した確認申請を行う。検査は行政の「建築主事」という資格のある担当者が行っていたが、平成10年に建築基準法が改正され、民間にも検査業務を開放された。

 この年にイ社、ERIを含む多くの民間の確認検査機関が設立され、現在、民間の確認検査機関は全国に約120社あるという。

 社団法人東京都建築士事務所協会では「人数に限りがあり、どうしても許可を出すまでに時間がかかる」と説明するが、行政で1カ月以上かかる検査に対し、「1週間で出ることもある」というほどに民間は早い。

 前出の建築士は「大半の建築主は借入金で建設予定地を確保しており、完成が長引くほどに金利もかさむ。確認申請に手間取ることなく、短期間で検査が完了することを望んでいる」ため、民間の出番が急増した。


日本ERIに検査に入る国土交通省職員。ずさんな検査に行政のメスが入った(右は鈴木崇英社長)=8日、午前9時31分、東京都港区赤坂 需要は急激に広がり、平成16年度には民間による確認検査が41万8871件にのぼり、33万3665件だった行政を初めて上回った。

 「行政より料金は割高だが、短期間で許可を出してくれる」−。イ社の場合も一気にうわさは業界内に広がり、14年にはわずか3000万円だった売り上げが、翌年には1億4000万円に。昨年は6億円、今年は11億6000万円と伸びていった。

 一方で偽装を許した背景として指摘されるのが、“業界”全体の検査員不足だ。1級建築士の資格を持ち、しかも2年以上の検査実務経験があって初めて民間で検査業務を行える「確認検査員」の受験資格が得られる。

 しかし、最大手のERIですら確認検査員は165人。昨年度の検査件数という約8万2000件からみると、単純計算で1人年間約500件もの検査をこなしていたことになる。

 偽装された図面は「プロがちゃんと見れば、明らかにおかしいことが分かるはず。分からなかったのではなく、見逃しだ」(前出の建築士)。短期間に膨大な検査をしなければならない事情が、偽装を誘引したといえるかもしれない。

 阪神大震災をキッカケに、行政だけでなく、民間にも委託された検査業務。「検査の需要は年々増えている」(同協会)という建築申請の現場は今後も、心もとない状況が続きそうだ。 

ZAKZAK 2005/12/08

http://www.zakzak.co.jp/top/2005_12/t2005120832.html