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2005年12月01日(木) 00時00分

“次々販売”で被害拡大 高齢者の消費トラブル 東京新聞

 独り暮らしなどのお年寄りの消費者トラブルが後を絶たない。特に訪問販売業者が入れ代わり立ち代わり布団や健康食品などを売りつける「次々販売」の被害が目立つ。摘発された日本メンテナンスに代表される悪質リフォーム工事もその一つ。深刻なのは、本人が被害を受けたという認識が薄く、発覚が遅れるケースが多いことだ。被害を防ぐためにはどうすればいいのか。 (重村 敦)

 国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた次々販売の相談は二〇〇四年度に一万五千四百七十五件。五年前と比べ約六千件も増加した。このうち、六十歳以上の相談は七千百十一件あり、四倍近くに増えている。

 認知症や知的障害者など十分な判断ができない人の相談も千六百五十七件にのぼり、五年前の四倍を超えている。

 購入した商品やサービスで多いのは、リフォーム工事や布団、健康食品、浄水器などだ。

 被害に遭った高齢者の共通点は、業者とのやりとりを明確に覚えておらず、勧誘を拒絶する力が弱いこと。独り暮らしのため、発覚が遅れることも多い。

 消費者トラブルに詳しい池本誠司弁護士は「やりとりを再現できないために消費者契約法をうまく使えないなど、高齢者救済のための法的整備は不十分」と指摘する。

 被害をどう防ぐか。

 ホームヘルパーなど福祉関係者らが日ごろ気を付ければ、異常を発見しやすい。認知症や知的障害などの人は、成年後見制度も利用できる。これは、本人が不利益な契約を結ばないよう、家庭裁判所に選ばれた後見人らが財産管理などをする制度。ただ、医師の鑑定などの費用に十万円以上かかることが多い。

 悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は「ゲートボールでも俳句の会でも他人と話す機会があるお年寄りは被害に遭いにくい。もし引っかかってもすぐに分かる。地域に井戸端会議の場を復活させてはどうか」と提案している。

     ◇

 全国各地の弁護士会は今月それぞれ、電話相談「高齢者・障害者の消費者被害一一〇番」を実施する。被害の実態を調べ、効果的な対策や今後の法規制を検討する。

 東京の三弁護士会は八日午前十時−午後四時、(電)03・3591・6341。愛知県弁護士会は七日同、(電)052・223・2355。日時は都道府県ごとの弁護士会で異なる。

 【ケース1】

 三重県四日市市の会社員男性(57)はことし五月、愛知県犬山市の借家に独りで暮らしていた姉(74)が、毎日配達される昼食の代金すら払えなくなったのを知り、驚いた。

 姉の家を訪れると、玄関に防犯用のカメラが取り付けてあり、部屋には布団や浄水器、健康食品など見慣れぬ商品がずらり。訪問販売で買った品々で大半は未使用のままだった。以前約六十万円あった預金はほとんど無くなっていた。

 弁護士に調べてもらったところ、二〇〇二年十二月以降、信販会社五社と分割払いの契約をし、購入総額は約五百万円に膨れ上がっていた。月約十四万円の年金生活なのに、返済額は最高で月九万六千円に達した。

 男性は、医師から認知症と診断された姉を自宅近くの福祉施設に入所させた。成年後見制度を利用することにし、認められれば、自己破産を申し立てる予定だ。男性は「訪問販売の被害の話は聞いたことはあるが、まさか自分の身内で起きるとは。めったに会わず、気づかなかった」と話す。

 【ケース2】

 名古屋市内に住む独り暮らしの七十代の女性の自宅には、二〇〇二年三月からことし六月にかけ、業者が次々訪れ、家の補強や水道工事、床下換気扇の設置などをして行った。被害救済に取り組む弁護士によると、判明しただけでも業者の数は十四社、契約総額は約三千万円に上る。

 預貯金二千万円を使い切った後、月約六万円の年金収入だけの生活になり、信販会社の月賦ですぐに行き詰まった。女性は業者のしつこい勧誘を断り切れなかったという。弁護士は「業者は悪質だが、信販会社も業者の管理が甘く、立て替え払いの審査自体を本当にしているのか」と憤る。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20051201/ftu_____kur_____000.shtml