2005年11月28日(月) 12時00分
デル1社では済まない--PCメーカーを揺るがす不良コンデンサ(CNET Japan)
キャパシタはコンピュータのマザーボード上にある小さくて安価な部品だが、このキャパシタに大量の不良品が発生し、PCメーカーにとって大きな頭痛のタネになる可能性がある。
Dell(本社:テキサス州ラウンドロック)は、同社の「Optiplex」ワークステーションの一部に、問題のあるキャパシタを搭載するマザーボードが見つかったことから、その交換費用として、3億700万ドルを計上したと先ごろ発表した。このシステムの交換作業に携わった複数の修理業者によると、問題のマザーボードは、2003年4月から2004年3月にかけて製造されたものだったという。
Dellでは幹部らが不良キャパシタによって生じた問題への対応を進めているが、彼らのとっての唯一の慰めは、この問題への対応を迫られた大手PCメーカーが同社だけではないことだ。企業各社や請負業者、複数のオンライン掲示板によると、実際にHewlett-Packard(HP)やApple Computer、さらにはIntel製マザーボードを採用する他のPCメーカーでも、同様の問題に直面したことがあるという。
キャパシタとは、電気を蓄積して電圧を調整するコンデンサのことで、Dell Optiplexワークステーション、Apple iMac G5の一部のマシン、2004年に製造されたHP xwシリーズのワークステーション、そしてIntelの「D865GBF」マザーボードを搭載するPCでも、問題のあるキャパシタが見つかっている。これらの不良キャパシタには、膨張、突出、流出、硬化などの現象が発生し、その結果画面の表示がおかしくなったり、断続的にシステムが停止してしまうことが明らかになっている。
Dellの「Optiplex GX270」や「Optiplex GX280」に使われていた不良キャパシタの写真は、「Badcaps.net」や「PowerEdgeForums.com」など複数のウェブサイトで公開されている。また、Appleの掲示板や「MacOSG.com」「G5Support.comなどにも不良キャパシタの写真が掲載されたことがある。
Dellは、同社と契約している部品供給業者の名前を明らかにしていない。同社によると、不良キャパシタが含まれるワークステーションで断続的なシステム停止の問題が生じたものの、それでデータが失われたことはないという。また、AppleおよびIntelの関係者も、自社のシステムに搭載されるパーツについてのコメントを差し控えた。
これに対して、HPだけは自社の採用した不良キャパシタのメーカー名を明らかにしている。同社によると、それを製造したのは京都にあるニチコンというメーカーだという。
ニチコンの北米オフィス(イリノイ州ショーンバーグ)に連絡をとったが、同社の広報担当はコメントを差し控えた。京都にある同社の本社にも電話と電子メールで繰り返しコメントを求めたが、回答は得られなかった。
HPの関係者や複数のファンサイトによると、ニチコンは50年にわたってキャパシタを製造してきた優れた実績をもつメーカーで、同社製品の大部分には全く問題がないという。
不良キャパシタ(「バッドキャップ」と呼ばれることもある)による問題は、今回が初めてのことではない。3年前には、全く異なる状況ながら、業界全体に影響を与える問題があったことをPassive Component誌が明らかにした。同誌は、複数の台湾メーカーが製造したキャパシタに問題があることを暴露していた。
今回問題になったのは、色が黒と金の2色で、長さ約2.5センチの低ESR(等価直列抵抗)アルミニウム電解シリンダというキャパシタで、側面にHN(M)およびHM(M)のマークがあり、上部には「X」の文字が刻印されている。このキャパシタは一部のマザーボードやビデオカード、さらにPC、モニタ、ビデオデッキ、テレビなどの電源にも採用されている。
複数の掲示板への書き込みによると、これらのキャパシタには液電解が過剰注入されていることから問題が生じたという。この液電解とは、過電流からプロセッサを保護したり、5ボルトから約1.5ボルトへと電圧を変換したり、あるいは電流のサージへの対応を助けるものだという。PCメーカー各社はまだ、これが問題の原因になったかどうかを認めていない。
専門家らによると、キャパシタの寿命は通常7年とされているが、適切に製造されていないものは3〜4年で劣化し始めるという。また、電源の容量不足やコンピュータの過熱、過負荷、プロセッサのオーバークロックなどによっても、キャパシタに早い段階で障害が起きることがある。DellのPCにキャパシタの問題が生じたことはこれまでなかった。
iSuppliのシニアアナリストMatthew Wilkinsによると、この問題をめぐってPCメーカー各社にどの程度の負担がかかるかを予測するのは難しいが、ただしいくつかの手がかりはあるという。
「この問題の財務面への影響が大きく、(Dellなどの)主要ベンダーが四半期決算目標を達成できない可能性がある場合は、何らかのコメントがあるはずだ」(Wilkins)
Blandon Rayは、ワシントンDCにある主要な大学の医療機関でネットワークエンジニア兼管理者として働いていた。同氏が管理していたDell Optiplex GX270では、2005年の2月ごろからマザーボードに立て続けに問題が発生し始めたため、結局Dellからサービスマンを呼んでボードを交換しなくてはならなかった。
「問題の発生したシステムは、すべて同じグループが使っていたもので、ほぼ同時期に購入されていたことが、しばらく経ってから分かってきた」(Ray)
さらに多くのシステムで問題が発生し始めると、Dellは「何の質問もせずに」それらに搭載されたマザーボードを交換し始めたと、Rayはいう。
Dellの「Community Forum」ページにも、2005年2月にOptiplexで不良キャパシタが見つかったという書き込みがある。こららのマシンでは、「断続的なシステム停止や熱によるシャットダウン、ビデオ表示の問題」などが生じたという。
Dellはこの問題の解決に3億ドルあまりの費用を計上したが、その半数はマザーボード全体の交換にかかるものだとWilkinsを推定している。また、同氏によると、残りの半分はシステムに交換が必要かどうかを見定めるためのロジスティクスに回されるという。
バージニア州で小規模なコンピュータ修理業を営むPaul Kamberisは、今年1月にいくつかのPCに生じた問題を目にしはじめた。これらのPCでは「青い画面」が頻繁に表示されたり、不特定のプログラムを起動すると新しいシステムがクラッシュしてしまうなどの問題があったことから、同氏はコンピュータの内部をチェックしてみた。
「これらのシステムに見られた唯一の共通点は異常なキャパシタだった」とKamberisは言う。「ハードディスクを初期化し、システムを再インストールしてみたが、それでも問題は解決しなかった」(Kamberis)。同氏によると、今年に入ってほかに3つのマザーボードでも同じ問題を目にしているという。
この不良キャパシタを含んでいたマザーボードはIntel製の「D865GBF」だが、このマザーボードはコンピュータメーカー各社や一部の小売店に販売されているとKamberisは述べている。
Intelの広報担当Bill Kircosは、「キャパシタの問題は目新しいものではなく、頻繁に生じる可能性があり、また原因についてはほとんど無限のシナリオや環境的なものが考えられる・・・そして特定のメーカーに固有の問題ではない」とし、同社のマザーボードについてのコメントを差し控えた。
Intelでは以前にキャパシタ製造業界内で問題があったことを認めており、また同社のウェブサイトには、デスクトップ用のマザーボード「875」「865」シリーズの一部でキャパシタから電解質が漏れる問題について説明した情報もある。
いっぽう、Appleの関係者もiMac G5で見つかっていたキャパシタ問題の報告についてコメントを差し控えた。
同社は8月に、2004年9月から2005年6月頃に販売された、第1世代のiMac G5の一部のモデルを限定的にリコールしていた。同社はその際「特定の部品の不良」が原因としただけで、具体的な詳細を明かさなかった。
2004年11月末にiMac G5を購入したOliver Kreuzenbeckは、当初自分の手に入れたiMacの画面が数秒おきにちらつく理由が分からずに途方に暮れていたが、Appleの掲示板にあった書き込みを呼んで、マシンの内部を調べてみることにしたという。
これと似たような苦情は、Appleの掲示板や複数のファンサイトにも見られるが、それによると不良なキャパシタのせいで、画面表示の乱れや歪みが生じたり、電源に問題が起こっていたという。なお、Appleではこの問題への対応にかかった費用については明らかにしていない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。
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