2005年11月27日(日) 00時00分
建築確認の「盲点」突く(朝日新聞・)
「姉歯(あねは)建築設計事務所」(千葉県市川市)が設計に関与した松本市など県内3カ所のホテルで発覚した耐震性強度偽装問題で、建築確認をした県や同市は構造計算書を審査しながら偽造をチェックできなかった。県は、「どういうシステムなら防げるか検討し、国に要望していきたい」と制度上の問題を指摘しているが、自治体の安全審査システムへの信頼が揺らいでいるのは事実だ。「行政のチェック」とはどのようなものだったのか。(五十嵐大介、鈴木拓也、古賀大己)
「このぐらいの量にはなりますかね」。県の建築担当者は、偽装が見つかった3軒のホテルと同規模の建物の構造計算書を見せた。厚さ10センチほどの書類に、細かい数字がびっしりと並ぶ。
建築基準法では、「木造以外の建築物で2以上の階数を有し、またはのべ面積が200平方メートルを超えるもの」などを建築する場合、建築申請をして建築主事の確認を受けなければならないと定めている。建築確認では、申請書のほか、図面や構造計算書がチェックされる。
昨年度、県内で申請された建築確認の件数は1万5407件。うち、県が7422件、長野、松本、上田の3市などが4980件、民間業者が3005件を処理した。
県では本庁と出先機関合わせて約50人の職員が、1人あたり年間約150件の建築申請を処理した計算になる。建築確認に携わる県のある担当者は「多い時はものすごい件数になる。今回のように巧妙に(偽装を)やられると発見するのは難しい」と言う。
構造計算は、多くの建築士が国土交通大臣認定のプログラムソフトを使用する。建築確認をする際、担当者はソフトに入力する前の、地震や風などの外力を示すデータが入った構造概要書と、出力された耐震強度などの結果をもとに作成された構造図を見比べる。
だが、建築基準法の施行規則では、コンピューターでの計算過程の提示までは必要とされていない。今回は、この制度上の「盲点」を突かれた形だ。
塚田和雄・県住宅部長は「非常に高度な改ざん。審査のブラックボックスを利用された」と話す。
また、松本市の赤羽厚志・建設部長は「構造図と構造計算書の整合性は取れており、市の建築確認に落ち度はなかった」としながらも、「(当時の担当者が)構造図面を見て、柱が細いことに疑問を抱かなければならなかったと思う」と語る。
同市は今後、国から認定ソフトによる再計算を義務づける指導があれば従う方針だ。
しかし、建築士の資格を持つ同市のある職員はこう打ち明ける。「今回の姉歯を含め、ほとんどの申請者は計算段階の資料も提出している。ただ、再計算が義務づけられたら、今の人員ではとても対応できない」
国交省は現在、自治体などに対し、大臣認定構造計算プログラムを使用した構造計算書の審査が適切に行われているかどうかの緊急調査を進めている。
(11/27)
http://mytown.asahi.com/nagano/news02.asp?kiji=5943
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