2005年11月19日(土) 16時30分
耐震計算偽造:民間開放の「建築確認」、チェック機能働かず /神奈川(毎日新聞)
「不正をまったくチェックできなかった」。姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)による構造計算書偽造事件で、構造欠陥が判明したマンションのある川崎市のまちづくり局職員は、不正を見抜けなかったことに肩を落とした。着工前に安全を審査する「建築確認」は“性善説”に基づく制度。1998年の建築基準法改正に伴い、国指定の民間確認検査機関にも門戸が開放された。民間扱いの場合、行政への詳細な関係書類の提出義務はなく、市側は「市が入り込む余地はない」と嘆く。
川崎市で強度不足が発覚したマンションは川崎市川崎区にある「グランドステージ川崎大師」。開発業者の「ヒューザー」(東京都千代田区)が建築し、昨秋から分譲していた。民間確認検査機関の「イーホームズ」(東京都新宿区)が建築確認を出した。
イーホームズから市には、A4判1枚で建築主ら名前や建築面積、建物の配置図など最低限の情報が報告として提出されたのみ。市の担当者は「チェックしようがない」と嘆く。抜き打ちの建設現場パトロールも外観上だけで、鉄筋の強度不足を見抜くのは難しい。
しかし、市内で年間約700件に上るマンション建設で、市が建築確認を出すのは4割。「重箱の隅を突くような」市の審査では、確認が下りるまで2〜3カ月かかる。民間は約1カ月で、民間の割合が年々高くなっているという。市の担当者は「構造設計した建築士と元請けの設計事務所、確認検査機関の3者間で、チェック機能がまったく働いていなかったのでは」と話している。【広瀬登、野口由紀】
◇住民に検査機関の責任強調する文書−−売り主の業者
ヒューザーは17日、「重要事項のお知らせ」と題した文書をマンション住民あてに投函。この中で「確認検査機関が機能をまったく果たしていなかったことが問題の根幹」とイーホームズの責任を強調した。さらに「国土交通省には国の責任と権限で対応するよう検討してもらっている」と国の責任にも言及した。
売り主の責任についてヒューザーの担当者は「瑕疵(かし)担保責任はある。住民が別のマンションに移転する場合、家賃補助も視野に検討している」と話した。【広瀬登】
11月19日朝刊
(毎日新聞) - 11月19日16時30分更新
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