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2005年11月19日(土) 00時00分

耐震強度偽造 安心の基礎が揺れた 東京新聞

 首都直下や東海、東南海・南海地震の襲来が必至といわれる中、一級建築士がマンションなど建物の耐震強度を偽造する「事件」が発覚した。政府は真相解明を急ぎ再発防止に取り組むべきだ。

 「とても腹立たしい。こんなことではもう住めない」「神戸の地震を経験しているのでとても怖い。すぐにでも引っ越したい」−。安心して暮らせるはずのマンションが突然、欠陥で震度5強の地震で倒壊する恐れがあるといわれては住民が怒るのは当然だ。

 千葉県市川市の建築設計事務所による計算書の偽造は、地震が起きたとき実際にかかる圧力を半分程度で計算し、必要な鉄筋の本数が少なくてすむようにしたという。その結果、耐震性の乏しいマンションやホテルがすでに十四棟も完成してしまった。危険と判断した東京都心のビジネスホテルは利用客の安全が確認できるまで営業を中止した。

 一級建築士が不正に手を染めていたとしたら、国家資格への信頼性は著しく損なわれる。生命・財産の安全や安心に直接かかわりのある仕事だからだ。

 事態を重視した国土交通省は建築確認をチェックする全国百二十二の民間指定確認検査機関に対して、法令順守と適正な審査業務の自主点検を求める通知を出した。緊急対策とともに建築事務所を近く刑事告発する方針だが、速やかに行うべきだ。

 なぜこんな不正が起こったのか。建築事務所側は「コスト削減のプレッシャーがあった」「仕事に追われ早く処理しないと仕事がこなくなる」と語っている。建築主などから経費削減の要請があることは確かだろう。ほかにこうした例はないか、心配になる。この事務所だけの問題なのか、建設業者や建築主の関与はなかったのか。解明が必要だ。

 建築のプロ中のプロである一級建築士は全国で約三十一万七千人が登録されている。建築確認などの受注競争は厳しい。だが金もうけのために安全無視では国民はたまらない。

 建物が完成するまでには何回かの検査が義務づけられている。国や自治体、指定確認検査機関などのチェックに手抜きはなかったのか。とくに中間検査は形骸化(けいがいか)していなかったかなど国は徹底的に調べてほしい。

 一九九九年からスタートした指定確認検査機関制度は、建物の完成後に行う完了検査の実施率を高め、耐震性を確保することがねらいである。今回のケースで規制緩和が仇(あだ)になったとの批判がある。だが改革路線は推進すべきだ。当面は不正な者への厳罰化で対処することである。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20051119/col_____sha_____003.shtml