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2005年11月18日(金) 00時00分

耐震偽造、京王系ホテル営業休止「安全確認できない」ZAKZAK

茅場町に今年8月オープン

【営業休止】


営業休止を余儀なくされた東京・中央区のホテル「京王プレッソイン茅場町」 書類偽造を受けた疑いがあるとして、18日、営業を休止したのは東京都中央区のホテル「京王プレッソイン茅場町」。京王電鉄など京王グループのホテルチェーンで東京証券取引所をはじめ金融・ビジネスの中心地に今年8月5日にオープンしたばかりだった。14階建てで全265室(土地・建物で総額約34億円)。

 運営する京王プレッソインは「安全性を確認できないままお客さまをお泊めすることはできない。当面は営業を休止する。虚偽設計の事実関係を確認中で、京王電鉄と協議した上で対応したい」と話した。

 営業停止が報じられた18日正午過ぎ、同ホテルロビーでは従業員が、延泊予定だった宿泊客30人を別のホテルへ移す対応に追われた。

 仕事で宿泊していた大阪市の女性(29)は、「2日前から泊まり、明日までの予定だったが、今朝7時にホテル側から説明を受けて驚いた。(昨日まで)何もなかったからよかったが、もし何かあったら…」とおびえたように話した。

【471戸の衝撃】

 これまでの国土交通省の調べで偽造が疑われるのは、プレッソインのほか、東京、神奈川、千葉のマンションなど21棟。完成済みが13棟(計471戸)、工事中・工事未着工が7棟=別表。完成済みの2棟について同省が耐震強度を再計算したところ、建築基準の3割−7割しか強度がなく、「震度5強で倒壊の恐れがある」(佐藤信秋同省次官)。

 同省は18日、関係自治体などと連携して完成済みマンションの住民に対する退去勧告、代替住居確保の検討を始めた。

 千葉県船橋市の賃貸マンションでは、住民が「新築なので耐震性は高いと信じていたのに…」と話した。

 分譲マンションの場合、より深刻だ。

 横浜市鶴見区にある10階建てのマンションに住む無職の男性(65)は「昨日(16日)、文書で連絡があった。9月に入居したばかりで、もうびっくりです。とてもショックが大きいが、今後のことは皆目わからない」と衝撃を隠さない。

 川崎市川崎区内のマンション(9階建て=23世帯)に住む主婦(32)は「信じられない。どうしてくれるのか。昨年11月、6000万円で購入した。ローンもまだ残っている。マンションの会社と川崎市からそれぞれ、謝罪の紙がポストに入っていただけ。姉歯さんには『あんたはそういうところに住めるのか』と言いたい」と怒り心頭で、「部屋は150平方メートルで、4LDK。子供3人がおり、広さで選んだ。住み始めて、まだ1年。家具もそろってようやく落ち着いたのに…」と声を震わせた

【偽造の動機】

 偽造を行った「姉歯(あねは)建築設計事務所」(千葉県市川市)の姉歯秀次1級建築士は18日午前、報道陣の取材に応じた。

 「(動機は)コスト削減のプレッシャーか」と聞かれると、「多少それはある」と認めた。

 マンション住民への説明について、報道陣から詰め寄られた姉歯建築士は「申し訳なかった。どう責任を取ったらいいのか。(責任が)大きくてわからない」と、か細い声で話した。

 同事務所を1人で経営する姉歯建築士は平成2年に資格を取得し、首都圏にある中規模マンションの構造設計などの仕事を下請けしていた。

 市川市の住宅街の一角にある2階建ての自宅を事務所と兼用にしているが、インターフォンや玄関灯は壊れたまま。ゴミも玄関前に出しっぱなしとなっていた。

【刑事告発】

 沓掛哲男国家公安委員長は18日午前の会見で、「このようなことが起こるとは想像もしておらず、誠に遺憾だ。違法行為を行った建築事務所に対し、法律に基づいて毅然とした態度で臨むことにしている。なぜ、そういうことになったのか、これからの捜査で判明するだろう」と語った。国交省でも、建築基準法違反での刑事告発も検討している。

【対応策】

 今回の問題について、建築関係者は「請負の建築士が構造計算書を偽造しても、施工から検査にいたる段階で不正が発見されるはずがチェックできなかった責任もある。建築士は『コスト削減のプレッシャーを感じていた』と説明しているようだが、請負競争の中で他の建築士も不正に手を染めている可能性もある」と話す。

 実際、同事務所だけでも請け負った物件は過去5年で90棟に及び、他の業者も含めて被害は拡大する可能性もある。

 では、こうした事態が降りかかったら、どう対処すればいいか。

 青木孝弁護士は、「住むことにたえない耐震性のマンションとすれば、契約解除および損害賠償ができる。程度にもよるが、購入費用、転居費用、補強工事費用などが対象になる。住民はマンション販売業者に責任を追及するとともに、マンション建築にかかわった請負業者側の不法行為責任を問うこともできる。今回は行政も現状を把握しており、末端の建築設計事務所も偽装を認めているため、救済しやすいケースではないか」と話している。

【偽造された建物】

東京都  計11

 港区   2

 中央区  2(うちホテル1)

 足立区  2(未着工)

 墨田区  1

 渋谷区  1

 江東区  1

 新宿区  1

 稲城市  1

千葉県  計6

 船橋市  5(うち建設中3)

 白井市  1(建設中)

神奈川県 計4

 横浜市  1

 川崎市  1

 藤沢市  1

 相模原市 1(未着工)

ZAKZAK 2005/11/18

http://www.zakzak.co.jp/top/2005_11/t2005111821.html