悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
着飾ったカップルや若者グループが行き交う東京・表参道。大通りに面した「ザ・ボディショップ」表参道店に一歩入ると、芳香がほのかに漂う。
五十三カ国に約二千店舗(日本国内は百十五店舗)を展開する、この化粧品会社は一九七六年に英国で創業以来、天然原料を素材としたスキンケア、ボディーケア商品などに力を傾注してきた。「動物実験反対」「人権尊重」「環境保護」など五つの「バリューズ(基本理念)」を掲げている。
「世界各国の自然原料を尊重してきた」というだけあり、明るい色調の店内には、タヒチのココナツオイルと花のエッセンスを混合したマッサージオイル、ハチミツと花のエキス入り入浴剤、麻の種が原料のハンドクリームなどが並ぶ。
■反対のラベル全商品に張る
全商品に「化粧品の動物実験に反対しています」と書いたラベルが張られ、動物実験を行う原材料業者とは取引しないなど、その姿勢は徹底している。
「当社の姿勢を評価して買いに来るお客さまばかりでなく、購入なさってから『化粧品で動物実験?』と驚かれる若い女性も多いですよ」とボディショップ担当者。
■昔からの知恵現代に生かす
六〇年代に、自然食品にかかわった人々が創設したドイツの化粧品会社LOGONAも動物実験に反対する。ロゴナジャパン(神戸市)の担当者は「動物実験が必要になるのは化粧品に新しい成分を使おうとするから。“自分たちの今”のために動物を犠牲にする必要があるでしょうか」と話し、「ハーブ療法など、いわゆる、おばあちゃんの知恵を現代向きに使いやすくする」ことにこだわる。
商品保存用の緩衝材も再利用する徹底ぶりで、これまでは、そうした姿勢に共鳴する消費者が、自然食品店など経由で同社を探し当て、顧客になるケースが多かったが、「最近は、若いお客さまも増えています」という。
「動物実験の廃止を求める会(JAVA)」(東京都渋谷区)のように、こうした動きを後押ししているNPO法人もある。JAVAは国内外の化粧品メーカー五百三十七社を対象にアンケートを実施。その結果、百三社から「動物実験をしていない」との回答を得た。九九年のアンケート時(六十四社)より大幅に増えた。しかし、無回答のメーカーも三百九十三社あるなど、意識の乖離(かいり)も垣間見える。
JAVAはアンケート結果などを記載した「JAVAコスメガイド 動物たちに優しいショッピングのためのガイドブック」を作製・販売している。動物実験をしているメーカー、していないメーカー、無回答だったメーカーなどが実名で掲載してある。
動物実験の典型例として知られるのが、ウサギの目を用いた安全性試験。人間のように涙を流したりしないため、点眼検査が容易だが、もちろん、使われたウサギは目がやられてしまう。原料をウサギやネズミにのませる急性毒性試験や、皮膚に塗りつける試験も行われている。試験が済むと実験動物は処分される。
化粧品を問題視する理由について、JAVAは「最終目標は医薬品も含めた全分野での動物実験廃止だが、目標達成の可能性が最も見えている化粧品に、今、力を入れている」と話す。
■EUは4年後全種類禁止に
EUでは昨年九月から、▽EU域内での化粧品の完成品における動物実験▽EUが認証した別の方法(代替法)があるにもかかわらず、域外で動物実験した化粧品・原料の販売−が禁じられている。
さらに、二〇〇九年三月からは▽EU域内での化粧品原料についての動物実験▽ほぼ全種類の動物実験について、実施した化粧品・原料の販売−が禁止される。
EUの動きは、いや応なしに日本に影響する。
以前は、化粧品メーカーが製品にデータをつけて旧厚生省に提出し、承認を得る方式だった日本だが、〇一年からは、過去の毒性試験で蓄積されたデータを基に、厚生労働省が、化粧品に使ってよい成分、使ってはならない成分を記した「化粧品基準」というリストを作って省令で示している。リストで使用可とされた成分を使う限り、メーカーはいちいち同省にデータを提出する必要もなく、実験は不要だ。
ただ、新たな成分を使用したい場合はこの限りでない。このため、毒性試験の実施方法に関するガイドラインが問題となってくる。
■毒性試験指針厚労省改定へ
現行ガイドラインは、動物実験反対の意識が浸透していなかった四半世紀も前に厚生省通達で出されただけに、「変えていくことになると思う」と厚労省。現在、国立医薬品食品衛生研究所で、代替法による毒性試験が可能なものを逐一、調べ出し、ガイドラインの改定作業を進めている。
だが、「今なら滑り込みセーフ」とばかりに、一連の動きを無視して動物実験に励むメーカーがあるのも事実だ。
「動物実験しなくても、パッチテスト、ソラマメのタンパク質を用いたテストなど代替法はある。動物実験しているメーカーは不要と知りつつも、ダブルチェックしたいのではないか。安全性が確認済みの成分を、わざわざ動物実験しているメーカーもある」とあるメーカー関係者は明かす。ヒトの皮膚培養細胞を用いる代替法もある。
動物愛護運動の関係者は「たかが化粧品のために動物を虐待するなと言いたい」「化粧品を作るのに、新成分などたいして必要ない。動物実験に躍起となるのは、新成分の特許を取って一もうけしたいからだ」と厳しく指摘する。
美容業界に詳しいライターの野村始子(もとこ)さんは「動物実験しないブランドを選ぶ人は確実に増えていると思う。地球環境に配慮することが当たり前になった今、代替実験に移行する企業も急速に増えていくと思う」と話している。
JAVAコスメガイドには絵本作家の葉祥明さん、作家の落合恵子さんら内外の著名人がメッセージを寄せているが、中でもフランスの女優ブリジット・バルドーさんの一言は厳しい。「ある者の苦しみをやわらげるためなら別の者を苦しめてもよいという意見は、単に矛盾をきたすばかりでなく、科学の信頼性をもゆるがせにする。そして利潤追求の主義主張こそは、この無理な理屈を推し進める原動力となっている。私は、人々の間に、この金もうけ主義に打ち勝つ強い心が生まれることを期待します」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20051118/mng_____tokuho__000.shtml