2005年11月12日(土) 15時44分
地域がん登録、兵庫県が個人情報保護理由に中止(読売新聞)
アスベスト(石綿)が主な原因のがん「中皮腫(ちゅうひしゅ)」による過去10年間の死者数が全国2番目に多い兵庫県が、発症部位や治療方法ごとのがん患者数などを調べる「地域がん登録」を個人情報保護を理由に2000年度末で中止していたことが12日、わかった。
同県尼崎市では6月、大手機械メーカー「クボタ」旧工場で周辺住民にまで中皮腫発症者が出ていることが発覚しており、専門家から「登録を継続していれば、早期に集中発生に気づいたはず」と批判が出ている。
地域がん登録は、大阪府など34道府県と広島市が実施。兵庫県は1964年から行い、95年以降は中皮腫も区分していた。
ところが、97年4月の個人情報保護条例施行に伴い、患者の同意なしに氏名や住所などの個人情報を集めることが問題になったため中止を決めた。
登録中止の理由について、熊谷仁人・県疾病対策課長は「当時は、国ががん登録を法制化する動きもあり、個人情報保護に慎重を期した。中皮腫とアスベストとの因果関係はわかっていたが、労災という認識だった」と話している。過去10年間の中皮腫による死者数が全国最多の大阪府は、条例施行後も継続している。
厚生労働省は個人情報保護法の施行後、全都道府県に「医療機関が地域がん登録用に診療情報を提供するのは、同法の適用除外にあたる」と通知している。
産業医学総合研究所(川崎市)の森永謙二部長は「登録データを分析すれば、尼崎での中皮腫の集中発生を把握できたかもしれない。登録を継続し、データを活用すべきだった」と話している。
(読売新聞) - 11月12日15時44分更新
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