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2005年11月11日(金) 00時00分

再興の芽育て『木まつり』  木材の新木場 木で作られた魚の水族館 東京新聞

 「電気の秋葉原」「魚の築地」に肩を並べる「木材の新木場」をつくりたい。そんな思いを胸に、東京・新木場の木材問屋の若手経営者らが木材や木製品の魅力を伝えようと「木まつり」を開いた。新木場は現在も木材供給の中心だが、木材問屋は大幅に減り、物流倉庫などに取って代わられている。「木まつり」はこの現状に危機感を持つ若手経営者らが新たな活気を生む第一歩として初めて本格的に開催した。

 今月五日の「木まつり」会場は、JR新木場駅から南側の第一、第二貯木場周辺。広大で分散されている会場に、来場者は同駅近くから循環バスで向かった。

 「このまま木材関連の会社が減り続ければ木場自体が機能しなくなり、日本の木の文化も一気に荒廃するのではないか」。主催した木材問屋など二十四社の若手経営者らでつくる「新木場倶楽部」代表の山崎尚さん(45)は強い危機感を抱く。

 江戸時代から続く江東区木場の木材関連会社は、地盤沈下などの要因で一九七四年から同区新木場に移転を開始。「江東区史」には、「(移転完了の八二年には)製材、合板製造、原木・製品問屋など、企業数は六百二十九社に及び、従業員数約一万人、取り扱い木材は二百余種と世界有数の木材加工、流通基地が完成した」とある。

 だが、現在、木材関連企業は大幅に減少。新木場限定の公的な統計はないが、関係者は「実際に営業しているのは二百社強ではないか」と話す。

 こうした現状の新木場に活力を取り戻そうとする試みが「木まつり」だ。倶楽部のメンバーは二十−五十歳代で移転二代目、三代目と呼ばれる世代。会場ではセミナーなども開かれたが、木材の関係者以外も楽しめる催しや展示が多かった。

 木場らしい催しの一つは「木挽(こび)き」のライブショー。東京ではほとんどいなくなった木挽き職人が樹齢七百−八百年とみられる太い木を巨大なのこぎりで切る実演をした。職人の東出朝陽さん(27)によると、製材機に入らない巨大な木のほか、最近では二またや曲がった木をそのまま製品に使う注文も多いという。「製材後に乾燥すると反るのでそれも考えて切る」そうだ。

 フローリングの床材を比較する展示もあった。ヒノキ、スギ、チーク、サクラ、メープル材などで張った床を実際に触ったり踏んだりして感触の違いを確かめられる。来場者はスギの弾力のある柔らかさやヒノキの滑らかさなどを楽しんでいた。また、くぎを使わず、木に溝を掘って組み合わせるなどの伝統的な工法による木造住宅の骨格模型(五分の一)も展示された。

 素材としてだけでなく、木製品や作品を見せるコーナーでは、倶楽部のメンバー宮崎豊さん(48)が自作のバイオリンを展示し、簡単な演奏も披露。端材の一枚板がバランスを取り、見事にボトルを支えるワインスタンドは、地元の福祉作業所の障害者が仕上げ作業をしたという。

 木製の魚の水族館は、木彫りの魚がまるで生きているように見えるほど精巧。倶楽部メンバーの村山元春さん(58)によると、和歌山県の作家に新木場の木材を提供して制作してもらった作品で、北欧からの外国人客もしきりと感心していた。

 「これまで新木場の問屋などは、専門家や企業だけを相手に仕事をしてきた。だが、これからは完成品も作り、消費者に木材の良さを説明できないといけない」と、山崎さんは展示の趣旨を説明する。消費者が家電を直接購入できる秋葉原と違い、新木場がどう消費者のニーズをとらえ、木や木製品の良さをアピールするかが課題という。

 木まつりは始まったばかりで、まだ来場者も少ないが、次回は人が乗れる木製の車を作り、レースをやる企画などもある。新木場の再興を目指し、今後、一般の消費者を集客する仕掛けも増やしていくとしている。

 文・古田秀陽/写真・中嶋大、梅田竜一

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