2005年11月10日(木) 02時56分
携帯3社新規参入認可 12年のなれ合いに風穴(産経新聞)
「料金半額」と強気/端末値上がりも
総務省の電波監理審議会(総務相の諮問機関)は九日、ソフトバンク、ADSL(非対称デジタル加入者線)大手のイー・アクセス、通信ベンチャーのアイピーモバイル(東京都千代田区)に携帯電話事業への新規参入を正式に認めた。十二年ぶりとなるニューフェースによって巻き起こされる料金・サービス競争は、“なれ合い”の空気すら漂う寡占状態に、風穴を開けることが期待されそうだ。
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≪サービス競争≫
「日本では、携帯電話料金を高く払い過ぎている」(ソフトバンクの孫正義社長)、「(携帯電話の料金は)既存の半分ぐらいにはできる」(イー・アクセスの千本倖生会長)、「既存のデータ通信サービスよりも高速なサービスを月額二千五百−五千円で提供する」(アイピーモバイルの杉村五男社長)。
待望の携帯事業参入を前に、各社の経営者は気勢を上げる。
総務省では現在、将来有望な産業育成のために全体的な周波数帯の再編を進めており、携帯電話の電波開放もその一環となる。アイピーモバイルが平成十八年十月からサービスを始めるのを皮切りに、イー・アクセスは十九年三月、ソフトバンクは同四月からサービスを始める方針だ。
三社とも最初はパソコンなどで利用するデータ通信サービスで、音声通話サービスは次の段階となる。
ただ、既存事業者に対し、競争力のある価格設定を打ち出して顧客を奪い取る構えで、ソフトバンクは「遠くない将来に一千万件」、イー・アクセスは「五年間でシェア10%」の目標を掲げるなど、鼻息は荒い。
「そんなに簡単な事業ではない。お手並み拝見だ」と既存事業者は平静を装うが、同じ番号のまま携帯電話会社を変更できる「番号ポータビリティ」(番号継続制)が来年から開始されることもあり、利用者の流動性が増すのは確実だ。
価格やサービス競争の結果、「業界全体で10%前後の料金値下げとなることはあり得る」(業界関係者)との指摘も出ており、そうなれば、既存事業者の高収益基盤は崩壊する。このため、「一定の危機感をもって」新規参入組の動向を注視するのが本音だ。
≪デメリット≫
四社だった携帯事業者が七社に増え、端末の種類やサービスが多種多様になるなど、利用者の選択肢の幅が拡大するのは間違いないが、問題点もある。携帯電話端末の値上がりが、その一例だ。
日本独特のシステムとして、携帯事業者は端末メーカーや販売店に販売奨励金を出しており、結果として高性能の携帯電話が低価格で消費者の手に渡っている。
だが、料金競争で携帯事業者に余力がなくなれば端末価格の高騰に結びつきかねない。これに伴って消費者の買い替えサイクルが長くなれば、開発投資も抑制され、携帯電話端末の競争力が低下する恐れがある。
新規参入組にとっても過度の料金競争が続けば、携帯電話の「命」でもある通信網といったインフラ投資が手薄になりかねない。財務基盤が脆弱(ぜいじゃく)であれば事業からの撤退を余儀なくされる可能性も浮上し、最終的なしわ寄せを利用者が受けることになる。新規参入による価格競争はメリットばかりともいえないわけだ。
十二年ぶりとなる携帯電話の新規参入を引き金に、関係業界も利用者も大きな変化の波に直面しようとしている。
(産経新聞) - 11月10日2時56分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051110-00000000-san-bus_all