悪のニュース記事

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2005年11月10日(木) 00時00分

悪質業者と組むNPOにご用心 東京新聞

 社会貢献に取り組むNPO法人を名乗りながら、実際の活動は犯罪まがいの悪質行為−。こうしたケースが全国で相次いでいる。1998年に施行されたNPO法(特定非営利活動促進法)は、自由な市民活動を支える理念から、行政の関与を最低限にしており、現在、全国に2万3000団体が誕生している。しかし、法人格の得やすさと、その後のチェック体制の弱さから、悪質業者などの「隠れみの」にもなっているようだ。その実態を調べた。 (岩佐 和也、白井 康彦)

 悪質リフォーム事件で、幹部らが愛知県警に逮捕された住宅リフォーム会社「日本メンテナンス」(愛知県豊田市)は、ことし三月に県の認証を得たNPO法人「心裕会」(同県岡崎市)と密接な関係を持っていた。

 団体の設立目的は「悪質商法の被害から消費者を守る」だが、実質的には日本メンテナンスの苦情処理機関だったとみられている。

 同会の理事らの一部は、日本メンテナンスの役員を兼ねていた。心裕会相談役で、同社の渉外担当を務めていた元愛知県警警部の後田正勝被告(62)=強要罪で公判中=も、その一人。同社の顧客の自宅を訪れ「日本メンテナンスに対し、一切の異議申し立てはしない」という確認書を取り付けるなど、同社の悪質リフォーム行為に加担していた。そのほかにも、心裕会の会員らが同社の顧客に対し「クレームを付けない」という確認書を取り付けたり、他業者との契約は断るよう説得するなどしていたという。

 同社を相手取り、約七千八百万円の損害賠償を求めた集団訴訟(その後和解)の原告団弁護士の一人は「消費者保護が目的のNPOであれば、日本メンテナンス以外の顧客、消費者に対しても保護活動していなければいけないが、心裕会にその形跡はない」と訴える。

 現在、心裕会は活動停止状態で、事務所は無人で施錠されたまま。県は、法人格の取り消しも視野に入れて同団体の調査を始めた。

 県の担当者は「申請に来たときは、特に問題があるようには見えなかった。認証は書面で審査するので、書面に不備がなければ認証せざるを得ない」とチェックの難しさを強調した。

 「多重債務者の救済」をうたいながら、多重債務者を食い物にするNPO法人や、自称NPOの組織もある。

 この問題に詳しい弁護士や支援団体の関係者によれば、典型手口は“整理屋”。多重債務者にDMを送ったり、チラシをまいて相談者を募り、弁護士事務所などを紹介して、任意整理の手続きに入る。

 弁護士は任意整理の際、二十数%の金利での契約を、利息制限法上限金利の18%(借り入れ元金十万円以上百万円未満の場合)で借りたことにして残元金を計算し直すのが通常だが、こうした組織と提携する弁護士は、消費者金融会社の言うままの利息で計算するうえ、報酬も多めに取ることが多い。モラルを問題視され、弁護士資格を剥奪(はくだつ)される例も増えてきた。最近では、司法書士の中にも、こうした整理屋と提携する例が出ている。また、弁護士や司法書士を紹介せずに自前で債務整理する組織もある。

 老人福祉系のNPOも、企業の隠れみのになっている例があるようだ。「NPOを育てるNPO」として活動する市民フォーラム21・NPOセンター(名古屋市中村区)の藤岡喜美子事務局長は「建設会社が老人ホームなどを造る際に、介護サービスのNPOを立ち上げることがある。中には、企業と一体になっているとしか思えない団体もある」と話す。

 東京の市民団体「市民活動を支える制度をつくる会」(シーズ)の松原明事務局長は「申請する団体の数からみても、団体に問題点があるかどうかを事前にチェックするのは無理。NPOの会員が他の団体と兼務する場合、利益相反が生まれる可能性があるが、NPO法にはそれに関する規定がない。不正を防ぐためにも、利益相反の規制を強化するよう検討を始めるべきだと思う」と法改正の必要性を強調した。

 さらに「NPOといって、善良な団体とは限らない。消費者側も、簡単に信じ込まないように注意すべきだ」と訴えている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20051110/ftu_____kur_____001.shtml