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大阪市中央区にある帝人大阪本社ビル五階。帝人クリエイティブスタッフ・機材購買部の職場には、わずか十人足らずの社員しか見られなかった。国内外に出張している社員が多くて空席が目立つのだが、全員そろっても二十人弱という。
「この人員で帝人グループに所属する約二十社分、取引先でおよそ二千社、年間五百億円に上る購買を一手に扱っているのです」と西村宏昭部長は言う。
購買部門というのは、商品製造から研究開発、事務までの業務に必要な大型機械や実験用マウス、文具類などさまざまな機材を選定し、取引先や価格を決め、購入する仕事だ。これまでコストダウンが難しい部門とされてきたが、帝人では購買部門を思い切って分社化した。さらにITを駆使することで、一九九八年度には七十五人いたスタッフをこれまでに半分以下に削減した。そのうえ、機材の選定から入庫までの運用コストも11%カットできたという。
「誰が、どこで、どういう仕事をしたらいいのか、業務のしくみを最適化できたことが成功のポイント」と西村部長。
こうした成果は一朝一夕で実現したのではなく、十年越しの取り組みが実ったものだ。準備期間を経て、二〇〇〇年度にERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)と呼ばれる基幹購買システムを導入。これにより、二百種類あった各種管理台帳を十種類ほどに整理統合、発注の電子化が実現した。
このシステムを基盤に改革を進めてきたのが、電子カタログによる消耗品の調達。フラスコやビーカー、ヘルメット、軍手などの汎用品や消耗品は、その都度伝票を切ると運用コストばかりかさむ。このため、購入個数や時期などの選定はすべて現場に任せ、電子カタログを使ってインターネット上で発注するようにした。その結果、運用コストの大幅な削減ができた。
中山雅人担当課長は「迅速に購入できるだけでなく、過去の購買データを分析し、さらに安く調達する工夫にもつながる」と説明する。
〇一年には、帝人と東レが中心となって繊維業界のための調達システム会社「ファイバーフロンティア」を設立した。同業他社と共同購入することで、材料をさらに安く買い入れることができるようになった。〇三年度からは、消耗品の購買にもこの調達の枠組みを使っている。
購買のIT化にあたって機材購買部のスタッフはのべ百八十回、社内説明会を開いたという。また、取引先の企業を大幅に切り替えることになるため、従来の取引先には粘り強く説明、理解を得る努力を続けた。
「ITを導入しただけでコストダウンにつながるわけではない。その裏には、人間のドラマがあることも知ってほしい」と西村部長は強調する。
帝人はここ数年、経常利益を伸ばしている。その背景に、機材ひとつにも無駄な経費をかけない徹底した業務改革があったのだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20051107/ftu_____dgi_____000.shtml