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2005年11月01日(火) 00時00分

東証システム障害 動かぬ表示板職員ぼうぜん 兜町サプライズ システム障害で取引が停止し、復旧を待つ東京証券取引所の職員=1日午後0時45分、東京・兜町で 東京新聞

 システム障害で全銘柄の取引停止という前代未聞の事態となった、東京証券取引所(東京都中央区)。一日午前、職員らは昨日の終値のまま固まった株価表示板に立ち尽くすばかりだった。個人投資家からは「信じられない」「自分の株はどうなるの」などと、不安の声があふれた。

 二〇〇〇年から売買管理がコンピューター化された東証アローズ(旧立会所)では、通常なら二十人前後の職員らがコンピューター端末の前で不正売買を監視している。早朝からのシステム障害で、職員らは画面を眺めたり、席を立ったり落ち着かない様子だった。

 正午すぎ。表示板の下にある電光掲示板ニュースからようやく再開予定の報が流れると、職員らは次々にコンピューターの前に着席。取引再開予定の連絡が入ると、職員らは安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 東証の周辺では、証券会社を訪れた顧客らが「せっかくのいいムードに水を差す」と顔をしかめた。証券会社の監査役という男性(62)は「大証で若干取引はしているが、お客さんが来ないから」と途方に暮れた様子。

 ジャーナリストという男性(80)は「ヘラクレスでシステムがパンクして新規上場の受け付けを停止したばかり。学習能力ゼロ。だいたい東証はコンピューター会社をグルグル変えすぎだ」と怒りの表情。「証券会社は一時間に五千億円を動かしている。ものすごく損をしているはずだ」と話した。

 東京都清瀬市の会社員男性(27)は「インターネットでの扱いがものすごく増えていて、いつかこんなことになるんじゃないかと思っていた。デイトレーディングをやってる人はたいへんだと思う」と話した。

■客の問い合わせ証券会社に殺到

 証券各社には一日午前から、「自分の注文はどう処理されるのか」など顧客の問い合わせが殺到、担当者は対応に追われた。各社はシステム障害判明後も注文の受け付けを続けているが、肝心の東証のシステムがダウンしているため、大量の取引が成立しないまま宙に浮いた形となった。

 顧客からは取引再開のめどについての問い合わせも多いが「障害の原因すら分からないため、東証のコメントをそのまま伝えている」(大手証券)。

■ネット取引急増背景/安全コスト議論を

 経済評論家の吉見俊彦さんの話 現在の株式取引の三割が個人投資家で、その七割がインターネットによる取引だ。現在はバブル期を上回る三十億株の出来高があるが、その要因はネット取引による「超高速回転商い」だ。株式市場は健全な投資よりも、目先の利益を得る売買が目的になりつつあり、ネット取引による出来高の急増がシステムダウンの背景にあるのではないか。また東証のシステムがダウンしたことで株式市場をリードしている外国人投資家に日本の技術そのものに対する不信感が生まれる恐れがあるのが心配だ。

 玉田俊平太・関西学院大ビジネススクール助教授(技術管理)の話 現在の市場主義社会の中では、株式市場は電気や水道と同じ公共インフラと言える。東証がコストダウンに走った結果、こういうトラブルが起きたとしたら問題だ。東証が世界を代表する市場であるためには、大規模テロなども想定した上で、安全管理や安定維持のためのコストをどうやって負担していくのかあらためて議論すべきだ。国民は市場管理のコストがただではないことを認識する必要がある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20051101/eve_____sya_____006.shtml