2005年11月01日(火) 13時25分
<損賠訴訟>「霊能者予言で苦痛」 540万円求め提訴(毎日新聞)
祈とう料名目に多額の現金をだまし取られたとして、福岡市の無職男性(64)が福岡県内の自称霊能力者の女性を相手に約540万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こしていたことが31日分かった。男性は「娘の病気がひどくなる」などと言われ、さまざまな儀式に参加したが、予言は当たらず「今思えば脅迫で、精神的なダメージは計り知れない」と主張。一方、霊能者側は「正当な宗教行為だ」と反論している。【取違剛】
訴状によると、男性の20代の娘が96年ごろから妻に暴力を振るったり、奇妙な言動を繰り返すようになった。専門医に診てもらっても症状は改善せず、00年1月、近くの神社で病気回復の祈願を受けた。その際、境内に「易占鑑定」と書かれた名刺大のチラシがあり、訪ねると別の女性霊能者から「もっと能力の高い霊能力者が必要」と言われ、被告の女性霊能者を紹介されたという。
霊能者は「自分の曽祖父は島津斉彬」と自己紹介し、男性に「神様の奉り方を間違っている。娘さんは何をしてもよくならない」と指摘。男性は浄霊などの儀式を受けたり、札を購入し、さらに霊能者主催の会合にも参加するようになった。
01年5月ごろ、霊能者は鑑定で「口がきけない孫が生まれる」「長男にはキツネがついており腸捻転(ちょうねんてん)になる」などと予言。怖くなった男性は03年6月までに、十数枚の札を買ったり、儀式に参加するなどし、祈とう料などは総額約370万円にのぼった。
しかし、予言は当たらず、娘の病状も好転しないまま。男性も不眠症になり「恐怖感をあおっては破格の祈とう料やお札代などを無心され、精神的、経済的に受けたダメージは計り知れない」としている。
霊能者やその代理人弁護士は取材に「不利益をほのめかすようなことは一切言っていないし、儀式への強制もしていない。信心の中で行われた正当な宗教行為だ。常識で考えて病気が治るはずもない」と反論した。
◇占いブームで苦情倍増
「悪霊がついている。おはらいに数十万円いる」などと不安をあおり、多額の祈とう料などを請求する「祈とうサービス」と呼ばれる悪徳商法が急増している。国民生活センターに寄せられた相談は652件(00年度)から1413件(04年度)と倍増。九州・沖縄の各消費生活センターへの相談も72件から141件と倍増している。
日弁連消費者委員会によると、霊や宗教に関するトラブルが急増している背景には占いブームがある。何の心得もない者が占師を装い、不安をあおるような予言をして多額の現金を要求するケースが目立つという。
同委員会委員長の山口廣弁護士は「まともな宗教やおはらいなどは非常識な金額を求めない。占いブームをあおっているマスコミの責任も大きい」と指摘。国民生活センターは「恐怖感や不安感につけ込む許せない商法。消費生活センターなどの第三者に相談してほしい」と呼びかけている。
(毎日新聞) - 11月1日13時25分更新
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