悪のニュース記事

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2005年10月26日(水) 00時00分

安易な匿名発表へ流れ 事件・事故 報道側検証 困難に 東京新聞

 事件や事故の被害者の氏名をめぐり、実名・匿名のどちらで発表するかを警察に委ねるとした政府の骨子案が二十五日、固まった。この案がそのまま決定すれば、事件、事故報道にもたらす影響は計り知れない。 

 被害者の実名・匿名発表をめぐっては、匿名発表が増加傾向にあるものの、警察の現場レベルでは対応が分かれている。この案が今後明文化されて独り歩きすれば、安易な匿名発表へ流れる傾向が強まりかねない。

 そうなれば、被害者本人や周辺からの取材が困難になり、警察発表の検証も難しくなる。事件、事故報道は、根底から揺らぎ、「国民の知る権利」に十分こたえられなくなるだろう。

 政府は、今回の議論が起きた背景に、過熱報道などによって苦痛を被った遺族らのメディア不信があることを強調する。

 遺族の心情への配慮は当然としても、遺族の間では多様な意見があり「原則、匿名発表にしてほしい」という意見に収れんしている、とは言えない。「犠牲になった家族が匿名報道で記号のように扱われるのは理不尽」「実名できちんと報道して、社会の関心を持ってもらいたい」−。遺族の話に耳を傾けると、こんな訴えも聞こえてくる。

 骨子案の危険性については、メディアだけでなく、日本弁護士連合会も強く警告していた。

 公共性の強い情報の取り扱いにかかわる社会全体の問題として、メディアのほか、情報の受け手側である一般市民も巻き込み、もっと幅広い場で議論するべきだ。 (鬼木洋一)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20051026/mng_____sya_____005.shtml