2005年10月14日(金) 17時21分
住基ネット訴訟 住民側の訴え棄却 福岡地裁(毎日新聞)
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住基ネット差し止め福岡訴訟判決で「不当判決」の垂れ幕を掲げる原告団ら=福岡市中央区の福岡地裁で14日午前10時23分、田鍋公也写す |
住民基本台帳ネットワークシステムは憲法が保障する人格権やプライバシーを侵害するとして、福岡県内の住民24人が国や県などに住基ネットからの離脱や1人当たり22万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、福岡地裁であった。一志泰滋(いっしやすじ)裁判長は「公共の福祉のために必要なら人格権は制限を受けるべきで、住民サービス向上や行政事務効率化を目的とした住基ネットの必要性は認められる」として原告の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
住基ネット差し止め訴訟は全国13地裁に提訴され、福岡地裁判決は3件目。今年5月、金沢地裁は「プライバシー権を保障した憲法に違反する」として住基ネットからの離脱を認めたが、名古屋地裁は請求を棄却し、司法判断が分かれていた。
住基ネットは、全国民に11ケタの住民票コードを付け、氏名、住所、生年月日などの本人確認情報をネットワークで共有し、行政機関は全国どこからでも本人確認ができる。原告側は、住民票コードについて国家から管理されない人格権を保障した憲法に違反すると主張したが、判決は「個人情報を効率的に送信するため無作為に作成された数字で、公権力による包括的管理をするとの規定もない」と退けた。
さらに、安全対策が不十分なまま、個人情報を住基ネットに流すのはプライバシー権に含まれる自己情報コントロール権の侵害とする主張には「利用法次第ではプライバシーが侵害される恐れがあるが、本人確認情報自体は思想、信条など内心に関する情報でなく差し止め請求権はない」と判断。そのうえで「住基ネットで使われる本人確認情報は秘匿すべき必要性は高くない。個人情報保護措置も講じられており、その利用は一般的に許容される限度を超えていない」と結論付けた。【木下武】
▽村井正昭・弁護団長の話 「国が実施していることだから間違いない」という予断だけで判断している。まったくあきれた判決だ。
▽総務省自治行政局市町村課の話 判決の詳細についてはまだ承知していないが、住民基本台帳ネットワークシステムの適法性、有効性について国の主張の正当性が認められたものと理解している。
<住民基本台帳ネットワークシステム>
99年の住民基本台帳法改正を経て02年8月から稼働した。パスポート申請時に住民票提出が不要になるなど、行政事務の効率化が目的とされているが、行政機関に大量に蓄積された個人情報が流出・悪用される危険性が指摘されている。現在は、福島県矢祭町、東京都杉並区、国立市が「住民の情報が守れない」として参加しておらず、横浜市は住基ネットへの登録を住民が自由に選べるようにする措置を取っている。杉並区は横浜市と同様の選択制を認めるよう求めて昨年8月、東京地裁に提訴した。
(毎日新聞) - 10月14日17時21分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051014-00000015-maip-soci