2005年10月12日(水) 12時22分
<国勢調査>トラブル366件 半数が「ニセ調査員」(毎日新聞)
今月1日に実施された国勢調査で、少なくとも37都道府県で366件のトラブルが起きていることが毎日新聞の全国調査で分かった。このうち、調査票回収の際に調査員を名乗ってだまし取るなど「ニセ調査員」によるトラブルが半数近くの173件を占めた。トラブル続出を受けて、総務省は、次回以降の国勢調査の方法を見直す方向で検討を始めた。
調査票の回収が原則的に10日で終了したことを受けて、毎日新聞が11日現在でまとめた。集計中とした県などもあり、トラブルは最終的にはかなりの数に上る見通しだ。
まとめによると、ニセ調査員による被害が最も多かったのは、愛知県の46件。次いで埼玉県19件、神奈川県18件、東京都16件。大都市圏を中心に26都道府県で被害が出ていた。横浜市では、調査員を名乗る男が「調査料として1万円が必要だ」などと言って現金も合わせてだまし取る詐欺事件が今月9日に2件起きた。
このほかのトラブルでは、群馬県板倉町で2日、調査票の回収に訪れた調査員の夫婦に対して男が暴行し、傷害容疑で逮捕される事件が起きた。夫婦と男は顔見知りで以前からトラブルを抱えていたという。
また、プライバシー保護意識の高まりを受けて、今回初めて調査票を封入して提出できるように封筒を全世帯に配布する方法を導入したが、栃木、神奈川など4県では、調査員が開封してチェックしたため、住民から苦情が出た。
総務省は「インターネットを利用した回答方法を導入するなど次回以降の対策を検討したい」と話している。【まとめ・臺宏士】
◇総務省も「想定外」 調査方法の見直しが迫られる
個人情報保護法の施行やプライバシー意識の高まりなどを受け、調査票の回収封筒を用意するなど工夫を凝らして行われた今回の国勢調査で、「ニセ調査員」によるトラブルは、毎日新聞の全国調査で200件近くに及んだ。総務省も「想定外」だった「ニセ調査員」トラブルで、担当者らは「名簿としての価値もないのに、1世帯分の調査票を取ってどう利用するのか」と困惑する。
「持ち去りの対象世帯もばらばらで、目的がさっぱり分からない」。そう話すのは、東京都の担当職員だ。実際、都内では、都内では、前回(00年)は電話を使った類似の事件があったが、今回は調布市や大田区で実際に調査票をだまし取ったケースが8件、八王子市や品川区でだまし取られそうになるケースも8件あった。
地域や被害に遭った年代や男女はバラバラだ。また、ニセ調査員を名乗った人物も、20〜50代とみられる男女で、被害にあった住民の証言では、同一人物によるとみられるケースは少ないのが特徴だ。
また、こうしたケースでは、被害にあった住民が被害届を出さないケースも目立つ。埼玉県では9件の被害の報告が住民からあったが、このうち警察への被害届の提出は1件のみ。札幌市でも2件の被害があったが、被害届は出なかった。いずれも住民が表ざたになるのを嫌がったためという。
警察は、被害届があれば詐欺容疑での捜査をする方針だが、「被害者の協力は不可欠で、被害届がない状況では捜査しづらい」(北海道警)という。このためか、これまで1件も容疑者が逮捕されていないのが現状だ。こうした状況に、東京都職員は「容疑者が逮捕されれば背景も分かるのだが」と話している。
こうしたニセ調査員の続出に、川崎市の担当者は「せめて記入済みの調査票の提出は郵送でないと再発防止は難しい」と本音を明かした。
総務省によると、ニセ調査員による調査票の持ち去り被害件数の過去の統計はない。社会問題化するだけの報告がなかったためという。総務省では正規の調査員であることを証明する身分証の確認を国民に呼びかけているが有効策は見つかっていない。
調査員による調査票の回収締め切りは10日までだが、未回収世帯には郵送提出用の封筒を配布し、今月31日までは受け付ける。調査結果は市区町村別の全国の男女別の人口と世帯数の速報値が12月に発表される予定だ。
(毎日新聞) - 10月12日12時22分更新
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