2005年10月04日(火) 02時44分
平成電電、再生法を申請 割安サービス“破綻”(産経新聞)
通信ベンチャーの平成電電(東京都渋谷区)は三日、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理された。負債総額は約千二百億円。割安な固定電話サービス「CHOKKA(チョッカ)」などで通信料金引き下げの先駆けとなったが、KDDIや日本テレコムなど大手通信会社も同様のサービスに乗り出したことで競争が激化。資金繰りが悪化し、事実上の経営破綻(はたん)に追い込まれた。
同日、会見した佐藤賢治会長兼社長によると「チョッカ」の契約数は今期中に約百万契約を目標に事業計画を立てたが、九月末で約十四万五千件と低迷していた。十五年以降、投資組合をつくり、個人投資家約一万九千人から設備投資資金として約四百九十億円を集めていた。佐藤会長は「利回り保証はしていないと思う」と述べたが、広告などでは「予定現金分配率10%相当」と説明されていた。
平成電電は昨年末に「チョッカ」の契約者を対象に、将来不要になるNTTの電話加入権を最大三万六千円で買い取るキャンペーンを実施するなど、ユニークな事業活動を展開していたが、計画通りに進まず、平成十七年一月期決算では売上高が四百四十億円、経常利益は十億円にとどまっていた。佐藤会長は「今後はスポンサーを探して事業を継続し、企業再生に全力を尽くしたい」と述べた。
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≪顧客獲得、消耗戦で疲弊≫
割安固定電話サービスの先駆けとなった平成電電が事実上経営破綻(はたん)したことは、通信事業をめぐる経営環境の厳しさを改めて浮き彫りにした。昭和六十年の通信自由化以降、新規事業者の参入が相次ぎ、低料金やサービス競争の激化で利用者の利便性や選択肢は拡大した。その一方、NTTを含む通信各社は顧客獲得に向けた消耗戦で疲弊しており、今後は業界再編も予想されている。(冨岡耕)
「事業成功のために頑張ってきたが、こういう事態になったのはひとえに私の責任です」。三日に行われた記者会見で、平成電電の佐藤賢治会長兼社長は何度も反省の弁を述べたが、事業計画の見通しの甘さを指摘されると口を閉ざす場面が多かった。NTTに対抗する奇抜な新サービスを矢継ぎ早に仕掛け、業界の“異端児”といわれた同社だが、大手事業者の追随や収益規模に圧倒され道半ばで“脱落”を余儀なくされた格好だ。
平成電電が主力とする固定電話市場は、携帯電話の拡大や少子化の影響で、年々契約者が減るなど厳しさを増している。業界最大手のNTTですら、和田紀夫社長が「固定電話事業は、三年間で約一兆円も減収になった」と指摘し、平成十七年三月期には初の減収減益となった。業績好調なKDDIも売上高と利益の大半は携帯電話事業のauによるもので、固定電話事業は赤字だ。
そうした中、平成電電は平成十五年七月、NTTの空き回線を利用する割安固定電話サービスを業界で初めて開始したが、昨年末にはKDDIや日本テレコムが相次いで追随。NTTも基本料金を初めて値下げするなどしたため、平成電電の優位性は消えた。その後は有名タレントを起用した広告費や膨大な設備投資が積み上がって、負債は増加。総務省幹部は「通信事業は見た目は先端的だが、中身は投資のかかる設備産業で簡単ではない」と指摘する。
一方、成長市場だった携帯電話でも固定電話同様に厳しい経営環境が待ち受けている。総務省は年内に新規参入事業者を選定することにしており、既存事業者との顧客獲得に向けた激しい料金競争が始まるのは必至だ。新規事業者の中には収益基盤が脆弱(ぜいじゃく)な会社もあり、市場撤退を余儀なくされる可能性もある。携帯免許を付与する総務省の責任が問われるとともに、利用者側も自己責任による新たな選択眼が求められている。
(産経新聞) - 10月4日2時44分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051004-00000015-san-bus_all