2005年09月17日(土) 16時15分
ニュースプリズム:保険証・免許証偽造詐欺の実態 「計画・指示」は別人 /茨城(毎日新聞)
◇捕まるのは“雇われ”実行犯
健康保険証や運転免許証を偽造して架空の人物になりすまし、消費者金融から融資を受けて現金をだまし取る詐欺事件が水戸市などで横行している。犯行を計画、指示しているのは別人の場合が多く、実行犯が逮捕されても別の者を雇って全国で同種の犯行を繰り返しているとみられる。その実態を追った。【土屋渓】
「リスクなし。日払いで3万〜7万円」
今年3月、神奈川県相模原市の自宅アパートで携帯電話の求人サイトを見ていた無職の男(25)は破格の金額に心を動かされた。仕事を転々としたが続かず幼稚園入園を控えた長男を養う食費にも困っていた。
すぐにメールで申し込み、返信された携帯番号に電話すると40代のサラリーマン風の男が出た。「1日10万円も夢じゃありませんよ」。翌日、東京都渋谷区内で電話の男に会うと「他人に成り代わって消費者金融から金を借りる仕事だ」と告げられた。
「詐欺の実行役か」。男は迷ったが借りた金額の1割がその日にもらえると聞き、引き受けた。「2人ペアで全国を回ってもらう」と言われ、4月4〜7日にかけて見張り役の見知らぬ男と福島県や三重県、水戸市の消費者金融を回った。
三重県で偽造運転免許証と健康保険証を使い70万円をだまし取るのに成功すると、「妻子のためにももっとだまし取ろう」とはまり込んだ。水戸市内で2軒目に向かった先の店内カウンターで健康保険証が偽造と従業員に見破られた。警察に通報されその場で現行犯逮捕された。
◇ ◇
偽造の保険証や運転免許証を使って消費者金融をだまし融資を受ける詐欺事件で、今年1月から9月までに水戸地裁に起訴されたのは未遂も含めて延べ13人。だが起訴されるのは実行犯ばかりで、ほかにも数社が水戸市内などの店舗で何度か被害に遭っている。
相模原市に住む男の犯行の指示役や共犯者についても検察側はは当初、中国人が背後にいるとみていたが氏名すら分かっていない。ある消費者金融は「組織的な犯行で手が込んでいると見破れない」と話した。
◇ ◇
今月開かれた男の公判。検察側は同種の事件が全国で多発している点に触れ実行犯の責任の重大さを指摘。偽造免許証について「一見して偽造とは分からない精巧さがある」と悪質性を強調したうえで、詐欺罪などで懲役3年を求刑した。
一方、男の弁護士は「共犯者は捜査の手を逃れてのうのうと暮らしている。被告は貧乏くじを引いたようなもので背後にいる者をどうにかしないとまた同じ犯罪が起きる」と指摘し、執行猶予付き判決を求めている。
9月17日朝刊
(毎日新聞) - 9月17日16時15分更新
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