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■原因
茨城県の養鶏業者で最初に鳥インフルエンザの感染が確認されたのは六月二十六日だ。それ以来、九月上旬までに計三十一カ所の養鶏場で感染が分かった。茨城県や埼玉県は農水省の意見に従い、当初は養鶏場の形式に関係なく、感染が確認された養鶏場の鶏すべてを殺処分にした。
九月二日、農水省の専門家委員会が違法な未承認ワクチンの使用が感染原因の可能性があると発表した。感染ウイルスの解析で、中南米で過去に見つかったウイルスの遺伝子の型とほぼ一致。渡り鳥の飛来は考えにくく、生きた鳥の輸入の形跡もない。このため未承認ワクチン説が急浮上した。だが物証はなく、各養鶏業者も未承認ワクチンの使用を否定している。
一方、農水省は国内で備蓄している適法な予防ワクチンの使用も原則認めていない。理由について農水省は「ワクチンによって症状が抑えられると、感染の発見が遅れ、他の鳥への感染が繰り返されて弱毒性のウイルスが強毒性に変異する危険性がある」と説明する。さらに「発生はほぼ茨城県内に限られており、ワクチン使用の必然性はない」(消費・安全局)とも。
■困惑
こうした農水省の対応に、養鶏業者の団体である日本鶏卵生産者協会は「未承認ワクチンの使用が本当なら厳正な対処が必要だが、適法な予防ワクチンの使用は認めるべきだ」(梅原宏保会長)と困惑する。
協会は「殺処分を受ければ、養鶏業者は倒産するかもしれない。秋冬には強毒性の鳥インフルエンザの発生が懸念される。国境を越えて侵入してくるウイルスを殺処分だけでは防ぎきれない」と不安視する。その上で協会側は、発生や感染を相当程度抑える新ワクチンが海外で開発されているほか、ワクチン接種とウイルス感染を区別するシステムも実用化されていると指摘。発生場所周辺の十分な調査を行い、限られた範囲で使用すれば「予防ワクチンのリスクはない」と主張する。
協会は九月下旬、養鶏業者による決起集会を計画しており、農水省とのミゾは簡単には埋まりそうもない。
■財源
協会が農水省の方針に反発する背景には、別の理由もある。
昨年国内で七十九年ぶりに鳥インフルエンザが発生したことを受け、損害を補償する互助金制度ができた。しかし、相次ぐ殺処分で財源が少なくなっていることへの懸念がある。協会は「生産再開まで時間がかかり、現在の補償制度だけでは経営がもたない。制度を拡充すべきだ」と訴える。
もう一つは、農水省が八月下旬、殺処分の対象について、窓のない密閉型の養鶏場で飼われている鶏は殺処分せず、監視処置にすると突如、方針転換したことへの疑念だ。密閉型は設備投資がかかり、大手しか導入しておらず、中小規模の業者の養鶏場はほとんどが開放型だ。協会には「農水省は大手業者を優遇しているのではないか」との不満が渦巻く。
農水省は「密閉型の鶏舎はウイルス拡散のリスクは低い」と方針変更の理由を説明するが、協会は「開放型より密閉型がウイルスを拡散させないという科学的な根拠はない」とし、ここでも見解が食い違っている。
<メモ>鳥インフルエンザのワクチン
感染予防のため、化学処理によって感染力をなくしたものが使われる。処理が十分でない場合に鳥インフルエンザの感染源となる可能性がある。農水省は国内に720万回分を接種できる量を備蓄。1羽につき2回の接種が望ましいとされる。家畜伝染病予防法で一般の使用は禁じられている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050916/mng_____kakushin000.shtml