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「返すために借りる自転車操業を五年間していました。内証の借金だったので、相談機関にも行きにくかったのです」
首都圏の学者、司法書士、消費生活アドバイザーらでつくる「多重債務者問題研究会」が八月二十日に名古屋市内で開いたフォーラムで、東海地方に住む主婦A子さん(51)が体験を打ち明けた。
生活苦から二十二年前、消費者金融に手を出した。次第に借入先が増え、昨年春には四社への借金残高が約三百五十万円に膨れ上がっていた。
本紙生活面の多重債務に関する記事を読んだことがきっかけで、相談機関に駆け込んだ。特定調停や過払い金返還請求訴訟といった方法で借金地獄から脱出。「解決方法があることや相談先を教えてもらって本当に助かりました」と振り返る。
多重債務の解決策には破産、個人再生、特定調停などがあり、弁護士会や司法書士会、市民団体などの相談機関も各地にある。ただ、法的手続きに無知な人が多く、弁護士会や司法書士会への心理的な「敷居の高さ」もあって、悩みを抱え込んでしまう人が多い。
こうした状況の解消策として多重債務者問題研究会が提唱しているのが常設の「多重債務者ホットライン」の設置だ。運営するのは、自治体から委託を受けたNPOまたは自治体自身。
相談電話が入ったら解決方法を分かりやすく説明し、必要なときは弁護士会や司法書士会などを紹介する。ホットラインの電話番号は住民に広く知らせ、気軽に相談できるようにする。
既に対策強化を打ち出している自治体もある。長野県は、県や県弁護士会、県司法書士会などで構成する長野県多重債務問題研究会の会合を昨年七月から繰り返し開き、多重債務者の救済を進める方策を練っている。
鹿児島県奄美大島の名瀬市では、市民生活係長の禧久孝一さんらが十数年前から多重債務者の相談に乗っている。解決策を詳しく説明。裁判所への付き添いといったところまで援助する。
自治体が積極的にかかわって多くの多重債務者が窮地を脱すれば、多重債務が原因の自殺や犯罪、夜逃げ、離婚などが減る。禧久さんは「多重債務を脱した人が支出を増やすことによる経済刺激効果が無視できない。こうした人の税金、公営住宅家賃などの滞納が解消されることも自治体にはプラス」と説明する。
多重債務者対策の強化を求める議会質問は昨年から今年にかけて、愛知県、愛知県豊明市、岐阜県、岐阜県山県市、香川県と相次いでいる。
愛知県は議会質問を受けて、県が設置している貸金業対策連絡会議の中に多重債務問題部会を置き、その第一回の会合を今月七日に開いた。県の関係各部、県警、県弁護士会、県司法書士会などがメンバー。県は「多重債務の解決方法を解説し相談先を網羅したパンフレットを作りたい」と、当面の方針を説明した。
愛知県警は議会答弁で、県内で昨年、借金など経済生活問題を苦にして自殺した人が三百十一人、借金返済を動機とした犯罪が四百八十件に上ったと明らかにした。
景気がいい愛知県ですら、この深刻さ。多重債務者の救済に当たっている人たちの「自治体も積極的にかかわって」という声は悲鳴に近い。
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全国各地の弁護士や司法書士らでつくる「行政の多重債務者対策を充実させる全国会議」は二十四日午後一時から、名古屋市中区大須2の名古屋中小企業福祉会館で、行政に対策強化を訴えるシンポジウムを開く。
多重債務やホームレスの問題に詳しい学者、弁護士、司法書士らがパネリスト。資料代五百円。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050915/ftu_____kur_____001.shtml