2005年09月08日(木) 21時43分
医師の説明義務違反を認定、出産後死亡で差し戻し判決(読売新聞)
埼玉県所沢市の国立西埼玉中央病院で1994年、長男を出産直後に亡くした東京都内の夫婦が、「帝王切開を希望したのに医師が自然分娩(ぶんべん)を決定し、自己決定権を侵害された」などとして、国立病院機構と担当医に慰謝料など約8400万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が8日、最高裁第1小法廷であった。
同小法廷は、請求を棄却した2審・東京高裁判決を破棄し、医師の説明義務違反を認めて審理を同高裁に差し戻した。高裁では、賠償額の認定を中心に審理するとみられ、夫婦側の逆転勝訴が確実になった。
横尾和子裁判長は、「帝王切開の希望に医学的根拠がある場合、医師は自然分娩を選択する理由を具体的に説明して、患者に判断の機会を与える義務がある」と述べた。
医師の方針よりも患者の自己決定権を優先するべきとした原告側の主張は認められなかったものの、患者が医療方法の決定に参加するためのインフォームド・コンセント(説明と同意)を強く求めた判断で、医療現場に影響を与えそうだ。
訴えていたのは、大学教員の夫(44)と妻(42)。妊娠した妻は94年2月、同病院で骨盤位(逆子)と診断され、帝王切開を希望したが、同年5月、担当の男性医師の判断により自然分娩した。生まれた長男(約3700グラム)は仮死状態で、約4時間後に死亡した。
1審・さいたま地裁川越支部は、自己決定権の侵害を認めて330万円の賠償を命じたが、2審は、「医師は自分が不適切と考える医療行為を行う義務を負わない」と述べ、賠償命令を取り消していた。
(読売新聞) - 9月8日21時43分更新
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