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着服をしていたのは、東京三菱銀行の子会社「ダイヤモンドスタッフサービス」から、東京三菱銀行港北ニュータウン支店(横浜市都筑区)に派遣されていた女(54)。被害は総額約9億9000万円に上が、一部は不動産投資に使われていた可能性があるという。
関係者によると、元社員は渉外担当として、顧客宅を訪問。平成5年5月から今年5月の約12年間にわたり、個人顧客十数人に対し、「長期間の預け入れで高い金利が得られ、利息は途中でも支払われる」などと架空の金融商品を勧誘。通帳などを預かり、口座から預金を引き出していた。
被害者はいずれも50歳代以上。元社員は金融商品の「利息分」として、顧客口座に定期的に金を振り込むなどの工作をしていたため、発覚が遅れたようだ。不審に思った顧客からの問い合わせで発覚。元社員は今年6月、懲戒解雇された。
元社員は、着服金のうち約7億4000万円を使い込んだことを認めており、「金融機関からの借金の返済に充てていた」と話しているという。同行が回収できたのは、わずか約2億5000万円だけだった。
ある大手行関係者は「預金着服は、行内の人事異動の際の業務の引き継ぎをきっかけに発覚するケースが多い。今回のように1人の人間が10年以上も同じ業務に携わっていれば、発覚が遅れるのは当然」と話す。
銀行業界ではバブル崩壊後の1990年代以降、行員のリストラによる経費圧縮が進み、人件費の安い派遣社員を急速に増やしてきた。
東京三菱銀行の場合、今年3月末時点の行員数は1万7516人だが、派遣社員やパート従業員などは約7000人。このうち、渉外担当は約550人だという。
派遣社員などには、顧客情報へのアクセスや、取引額に一定の制限が設けられ、「行員に比べ、業務の権限はかなり限定されている」(同行広報室)という。が、前出の大手行OBは指摘する。
「今回のケースのように、いわゆる『外回り』は、上司の目が届きにくい。上司にしても『外部の人間だから』と監督を緩くしてしまう危険性もある」
UFJ関係者は「合併に伴い、派遣社員に関するシステムも統一することになるが、相手がこんなずさんな管理をしていては、先が思いやられる」と頭を抱える。
東京三菱銀行は6月、元社員を業務上横領容疑で神奈川県警に刑事告訴。7月には畔柳信雄頭取と三木繁光会長ら経営トップと関係役員計7人を2カ月間・20%などの減俸処分とした。
業務上横領罪の時効は7年。「捜査中なので、具体的な数字は明かせないが、かなりの額について立件できない可能性もある」(捜査関係者)という。ずさんな人事管理の代償は、ばかにならないようだ。
ZAKZAK 2005/09/07