2005年08月20日(土) 17時38分
悪質リフォーム:香川県への相談増加 /四国(毎日新聞)
◇高松の70代夫婦、5社と480万円契約−−脳こうそくの夫が困窮
判断能力が低下しているお年寄りや障害者らを狙って家の改修工事などを勧め、高額な代金を請求する「悪質リフォーム業者」が全国的に問題になっている。香川県消費生活センターにも、「必要のない工事を次々と契約させられた」などの相談が寄せられており、同センターは「家族などが頻繁に連絡を取り、生活状況を把握しておく事が大切」と呼びかけている。
昨年までに同センターや同県内4カ所の県民センターに寄せられたリフォーム関係の相談件数は02年93件、03年144件、04年128件。統計をまとめた豊嶋昇副主幹は「すべてが悪質な事例とは限らない」と話すが、増加傾向を示している。【南文枝、大久保昂】
高松市内に住む70代の夫婦は、02年2月〜03年5月にかけ、5社と自宅の改修工事や布団など計約480万円の契約を結ばされていた。夫は脳こうそくだったという。「お金がない」と繰り返すようになり、家族が事情を聴くと、契約書が次々に出てきた。
内訳は床下換気扇7台▽耐震補強システム▽浄水器などで、多くが必要なかったとみられる。ある業者は、本来2台ぐらいしか必要がない床下換気扇を約118万円で計5台取り付ける契約を結んでいた。夫婦は信販会社とクレジットカード契約を結ばされ、月々約20万円を預金口座から引き落とされていたという。
同センターは、家族に夫の脳こうそくの診断書を添えて5社に解約通知を出すよう勧め、2社が解約に応じた。
だが、3社は応じず、家族は弁護士に相談したという。信販会社は今後、代金の請求をしないという「既払金放棄」に応じた。
◇香南の70代夫婦、補強後に床ぐらぐら−−床下調湿剤は逆効果に
また、同県香南町の70代の夫婦の場合、昨年6月と今年1月に高松市内のリフォーム業者と床下換気扇の取り付けや補強工事などで計約140万円の契約を結んだ。しかし、補強工事をしたはずの床がぐらぐらするため、県消費生活センターを通じて建築士に見てもらったところ、床を支える金具の取り付け方が不安定なことが分かった。
さらに、地面にじかにまかれた床下調湿剤は湿気を吸って逆効果となっており、計8台が取り付けられた床下換気扇もほとんど不必要だったことが明らかになった。工事代金は、相場の約2〜3倍だったという。
夫婦は「ずさんな工事だったことはうすうす気付いていたが……」と話す。
◇他業者の見積もりを 訪問販売は避ける−−弁護士のアドバイス
同県弁護士会消費者委員会の委員長を務める白井一郎弁護士(49)は「周りに話していないケースもあり、潜在的な被害者は多い」と指摘する。「身内に相談できずに被害が拡大していく。最終的に家計が傾く程度にならないと分からない」
白井弁護士は対策として、訪問販売を避ける▽他の業者にも工事の見積もりをしてもらう▽高額な工事はすぐに契約しない——などを挙げる。
◇成年後見の利用増加−−高齢者らの財産守るため
そのほか、判断能力が不十分な人のために後見人が代理で財産管理契約などを行う「成年後見制度」がある。本人が契約する「任意後見」と家族や市町村長が後見人を選べる「法定後見」があり、家庭裁判所に申し立て手続きをする。
高松家裁によると、後見開始などの受理件数は02年181件に対し、04年240件と、2年間で約30%増加している。同家裁は「制度が認知されてきたことや高齢化が背景にある」としている。
判断能力が不十分なお年寄りや障害者らを食い物にする悪質業者。「自分や家族は絶対大丈夫」と言い切る前に、一度真剣に対策を考えてみる必要がありそうだ。
8月20日朝刊
(毎日新聞) - 8月20日17時38分更新
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