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2005年08月15日(月) 00時00分

メディアアート NTT東 『ICC』閉館検討 東京新聞

 「メディアアート」の分野で、国内随一の展示施設として知られる「NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)」(東京・西新宿)が閉館の危機を迎えている。運営するNTT東日本が本年度いっぱいでの撤退を検討しているからだ。国際的に評価されてきた貴重な活動をどう継承するのか、将来像を全く示さない企業の姿勢に、文化人らからは「美術館は誰のものか」と根源的な疑問も投げかけられている。

 ICCのホームページによる告知からわずか一週間。全国ツアーを終えたばかりのミュージシャン・坂本龍一さんの緊急ライブが八日、開催中の「ローリー・アンダーソン展」のイベントとして、美術館内で開かれた。

 楽器を持たず、ひたすらノートパソコンの前に座り続ける坂本さん。シンプルな打楽器音に、虫の声や水の流れのような自然の音、ノイズを重ねていく。この会場ならではの貴重な即興演奏に、約三百人のファンは興奮冷めやらぬ様子だった。

 ステージでは坂本さんは無言だったが、取材に対し「(ICCは)大変すばらしい美術館。ここがなくなることは、国際都市・東京として大変恥ずかしいことだ」とコメント。ライブを訪れた京大経済研究所助教授の浅田彰さんも「坂本さんほどのスターがふらりとやってくる施設が、世界中探してどこにあるのか。むざむざ終わらせるのは惜しい」と強く話した。

 ICCでは、二〇〇一年に展示室が大幅縮小され、館長ポストまで廃止されるなど段階的なリストラは続いていた。今年三月ごろには、職員に(1)二〇〇五年度は例年四回の企画展を三回とし、十二月末で終了とする(2)〇六年一−三月は、閉館に向けた事務処理にあてる−とする内容が伝えられたという。同時に資料を一般公開していた図書室や、ロビーのカフェが閉鎖された。

 その一方、企画展の動員は年四万−五万人と好調だ。昨年冬の「明和電機展」は二万三千人の集客を記録した。

 難解なイメージで語られがちだったメディアアートの普及という目的では、それなりの成果を上げてきたが、通信事業の競争激化で合理化の矛先が美術館に向かったとみられる。NTTグループは、二〇〇五年三月期連結決算で営業利益が22・4%減の一兆二千百十二億円となるなど、民営化後初の減収減益だった。

 最近はメディアアートをカリキュラムに取り入れる大学が増え、授業でICCを利用する学生も多い。閉館となれば、その教育の場が失われ、これまで蓄積してきた収蔵作品やデータベースの散逸も心配される。

 「企業内の都合だけで公共性を含んだ活動の中止を決定できるのか。(NTT側は)ICCが果たしてきた国際的役割や評価をどう考えているのか。たとえ(運営を)やめるにせよ、事業継承への努力をしなければ公的責任についてあまりに無自覚といえる」と、山口情報芸術センター(山口市)の学芸課長阿部一直さんは批判する。

 とはいえ、企業にとっては利益追求こそが第一。これを文化とどう結びつけるかは難題だ。浅田さんは「文化への助成としてだけ考えるから無駄だという声が出てくる。携帯端末など新商品の開発に、アーティストの発想を結びつける研究の場として位置づければいい。運営手法を見直すことで企業にとっても財産となりうる」と提案していた。

 NTT東日本広報室の話 (閉館は)正式決定ではない。経営環境を精査する中で、閉館、縮小などさまざまな可能性を検討している。内容については、議論の最中であり、オープンにできる段階ではない。

 文・浅田晃弘

<メモ>メディアアート

 映像やコンピューター、音響機器、インターネットなど科学技術を表現に生かした現代芸術の形態。1990年代に入って用語として広く使われるようになり、大学などにも専門コースの開設が相次いでいる。ICCは、「電話百周年」記念事業として8年の準備期間をかけ、97年に東京・西新宿の東京オペラシティタワーに開館。ドイツのZKM、オーストリアのアルス・エレクトロニカ・センターと並び称される、国際拠点施設として知られる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050815/mng_____thatu___000.shtml