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トランス酸とは、マーガリンや、クッキーなどに使われるショートニングに含まれる。製造の過程で液体の植物油を固形化するため水素を添加する際に生成される。
日本食品油脂検査協会の調べでは、家庭用マーガリンの含有量は平均10%。マーガリンなどを使用した菓子やパン、植物油脂でできたコーヒーフレッシュにも含まれ、例えばクロワッサン100グラムあたりの含有量は2・8グラムという。
米食品医薬品局(FDA)は昨夏、このトランス酸の摂取が動脈心疾患のリスクを高めるLDL(悪玉)コレステロールの値を上げ、HDL(善玉)コレステロールを低下させるとして、来年1月から食品の含有量を明記するよう義務付けることを決めた。
米国では“国民食”のドーナツやフライドポテト、チキンを揚げるのにもショートニングを多用。ポテトMサイズなら約8グラムのトランス酸が含まれる。このため、マクドナルドでは油を健康に配慮した新タイプにすると発表した。
多少なりとも健康に気を使っている人なら、読みつつ、「?」と思っているはず。常識では、植物油が善玉コレステロールを増し、動物性脂肪が悪玉を増す。つまりマーガリンは「正義の味方」ではなかったか。
ところが奥山治美・金城学院大学薬学部教授(予防薬食学)は「動物性油脂が血清コレステロール値を上げ、植物性が下げると言われだしたのは、1960年前半」としたうえで、こう明かす。
「その後の研究で、体が慣れると両者の効果には差がなくなり、一部の国では、長期的に植物性油脂に含まれるリノール酸を摂取すると死亡率が高まるという臨床結果さえ出ました」
トランス酸については90年代、欧米で摂取量と心臓病に相関関係があるとする疫学調査の結果が複数発表され、危険性が明らかに。この後、認知症や肥満などとの関連を指摘する論文や専門家の意見も相次いだ。
デンマークでは全食品における含有量を2%までとする制限を設け、カナダでも表示を義務化。WHO(世界保健機関)も、「摂取エネルギーの1%以内(グラム数では2グラム程度)に抑えるべき」としている。
ところが日本では内閣府が昨年、「諸外国と比較してトランス酸の摂取量が少ない日本人の食生活からみて、トランス酸の摂取による健康への影響は小さい」との公式見解を発表した。
「成人ひとりあたりの1日の摂取量は、99年のマーガリンなどの生産量から割り出すと1・56グラム。エネルギーの1%にも満たない」とは、前出の検査協会。一方米国では、摂取量は5・8グラムだという。
日本マクドナルドも「日本では米国とは違う牛脂中心のショートニングを使っている。それでもトランス酸が含まれるとの認識はあるが、日本の場合基準が違う」。また、家庭用マーガリンで4割のシェアを誇る雪印乳業も政府などの見解と同様で、「(マーガリンは)全く問題ない」と意に介さない。
政府などは、日本人はリノール酸の大量摂取でトランス酸の危険は相殺されるとしているが、実はこのリノール酸こそ、海外では心筋梗塞(こうそく)のリスクを高めるとされている。
奥山氏は遺伝的に高血圧になりやすいネズミにバターやマーガリンを含む餌を与える実験をした。するとマーガリンのネズミは約310日後にすべて死亡したが、バターのネズミはこの時点で8割弱が生き残った。
奥山氏は「コレステロールについても、最近では健康な人ならば値が高いほうが長生きするとの調査結果がある」とし、こう指摘する。
「トランス酸は内分泌をかき乱す作用がある。政府は業界に配慮しているようだが、若い人の食生活を考えてほしい」
ZAKZAK 2005/08/03