2005年07月21日(木) 02時54分
楽天・ソフトバンク、参入効果 球団知名度、本業へ援護射撃(産経新聞)
「新規事業」まだ手探り
楽天、ソフトバンクのIT(情報技術)関連大手二社が経営に参入したプロ野球。公式戦では正反対の成績を残している両球団だが、親会社のブランド力向上には貢献し、本業を大きく後押ししている。ただ、インターネットを経由した試合映像の配信など、IT企業として将来性を期待している事業についてはまだ手探り状態で、必ずしもサービスの利用者獲得には結びついていないようだ。(竹岡伸晃)
「地方の老舗や有名店の出店が確実に増えた」
楽天でインターネット商店街「楽天市場」への出店を担当する、岩城信也・営業開発部副部長はこう顔をほころばせる。五十年ぶりの新規参入球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」は、勝敗にかかわらずメディアに大きく取り上げられる。その結果、ネットになじみが薄かった中高年層などにも社名が浸透、「出店案内の話がしやすくなった」というのだ。出店から閉店を引いた店舗の増加数は、四月以降の三カ月で一千店超。本拠地のある東北エリアの六月末の店舗数は四百四十七店で、前年比で倍増した。
球団自体の人気も高く、入場料収入や球場広告などによる今年度の売上高は、当初予想を七億円上回る約七十億円となる見通しだ。同社広報担当者は、「グループの事業に好影響を与えている。球団を持つ効果は大きい」と笑顔を見せる。
人気球団「福岡ダイエーホークス」を引き継いだソフトバンクも、「グループには八百社あり、多様な事業を手がけている。ホークスという象徴を持つことで、仕事がしやすくなった」と話す。
こうした知名度の向上に比べ、プロ野球という「優良なコンテンツ(情報の内容)」を、本業のIT関連サービスに生かす取り組みはまだ緒に就いたばかりだ。
ソフトバンクグループのヤフーが二十日発表した平成十七年四−六月期決算は、ネット広告の好調な伸びを受け、連結売上高が前年同期比58・7%増の三百八十八億円となり、四半期ベースでは過去最高を計上した。最終利益は24・1%増の百三億円だった。
ただ、同社やソフトバンクBBが手がけるブロードバンドサービス、ヤフーBBの会員数の伸びは鈍化傾向にある。ADSLの普及が進んだためだ。ヤフーBBではこの春から、福岡ソフトバンクホークスの主催試合を生中継しているが、「映像配信が会員の獲得に直結しているわけではない」(ソフトバンクBB)。
決算発表の席上、ヤフーの井上雅博社長も、「野球が(利用者を決定的に増やす)キラーコンテンツかどうか、判断はまだ難しい」と述べた。
また、楽天もインターネットでイーグルスの試合が見られるサービスを始めたが、料金が年間十万円と高額なこともあり、「五百人限定で始めたが、今のところ利用者は十人程度」(楽天野球団)にとどまっている。
先月からは試合中継の携帯電話への配信も始めたが、こちらも伸びはいま一つ。同社では、「現状ではテレビの方が画質がよく、ネットによる野球中継の需要を探っている段階。本格的に力を入れるのは、光ファイバー網などの整備が進んだ後になる」と話す。
ホークスを買収したソフトバンクの孫正義社長は、「ネット放送の活用」など、球団経営にブロードバンドを軸とした新たなビジネスモデルを示していた。だが、それが実現するまでの道程はまだ遠そうだ。
(産経新聞) - 7月21日2時54分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050721-00000004-san-spo