2005年07月20日(水) 16時50分
リフォーム詐欺:容疑で3人逮捕 業者間で情報交換、高齢者の弱みつけ込む /静岡(毎日新聞)
◇同一被害者に契約次々
高額リフォーム被害者に代金返還訴訟費用の名目で、金をだまし取った詐欺容疑で19日、元業者ら3人が県警に逮捕された。業者らは、工事注文を取りやすい家の情報を同業者間で交換し、一人の被害者に、何度もさまざまな契約を結ばせていた。一方で被害者は「恥ずかしい」と誰にも相談できないまま被害が拡大、泣き寝入りするケースも多い。高齢者の弱みにつけ込んだ“たかり行為”の卑劣な手口が、今後暴かれる。【古関俊樹、望月和美】
◇作業着の男
「家が古くて床下に湿気がたまる。換気扇で空気を外に出さないと、とんでもないことになる」。浜松市の70代の女性方に、作業服姿の男が突然訪ねてきたのは、00年ごろ。男は柔らかい口調で、不安をあおるように語りかけた。女性は同居の息子と相談し、1台約10万円する換気扇を7台設置する契約を結んだ。工事費なども含め、約100万円支払った。
その後、なぜか別のリフォーム業者が次々と訪ねてくるようになった。「床下に備長炭を置いた方がいい」「乾燥剤をまいた方がいい」。女性が家に1人でいる日中を狙い、家族に相談する時間を与えないよう、訪問当日に契約を結ばせ、金も払わせた。払った金額は数百万円。女性は「本当にうまい話し方で、つい信じてしまった」と涙ぐむ。
さらに今年冬、弁護士を名乗る男が「訴訟をすれば半分ぐらい取り戻せる」と家を訪問。また十数万円をだまし取られた。女性の息子は「判断能力が弱くなった高齢者の弱みにつけ込んでいて、許せない」と怒りで肩を震わせた。
◇「あまい家」
逮捕された元業者は98年ごろ、浜松市内で別々のリフォーム会社に勤務を始めた。顧客名簿を交換するなど、同業者間で情報交換をする中で知り合った。00年ごろ、共同で「東海クリーンメイト」という会社を立ち上げ、社名を変えながら床下工事を続けていた。
業者間で、工事の注文を取りやすい客は「あまい家」と呼ばれ、標的となった。一度床下に炭を置いた後、情報を仕入れた他の業者が「炭を取り出すことが必要」などと言って、二重に金をだまし取ることまであった。標的は、主に1人暮らしの高齢者だった。
3人は、02年にかつての床下工事仲間が弁護士を装って訴訟費用として金をだまし取り逮捕された事件を参考に、昨年1月からこの方法をまねて金集めを開始。元客の家に行く際、工事に行ったことのない方が弁護士として、「被害者の会を作る。裁判費用に30万円かかりますが、勝てば全額が返ってくる」などと言い、訴訟費用名目に金をだまし取っていた。
◇断りきれない
県の県民生活室のまとめでは、昨年度、県内の消費生活センターに寄せられたリフォーム被害の相談件数は267件。内容は、増改築工事が62件、屋根工事が49件の順。ここ5年間は300件前後で推移している。
県が昨年、1人暮らしの高齢者1000人を対象に行ったアンケート調査では、「訪問販売を受けても契約しない」と考えている人は約94%だったが、実際は約22%が「契約したことがある」と答えていた。訪問販売を断りきれない高齢者の姿が浮かぶ。
県民生活室は「1人暮らしで寂しく感じているお年寄りに親切に接し、住宅の安全などお年寄りが不安な点に業者はつけこんでくる」と説明。アンケート回答者の約20%が「契約するまで販売員が返ってくれなかった」と答えていることから、「とにかく部屋に上げないことが大切」と呼びかけている。
7月20日朝刊
(毎日新聞) - 7月20日16時50分更新
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