2005年07月14日(木) 13時29分
つくる会などの著書、独断的廃棄は違法…最高裁判決(読売新聞)
千葉県船橋市の市立西図書館に置かれていた著書を女性司書によって廃棄され、精神的苦痛を受けたとして、作家の井沢元彦氏ら7人と「新しい歴史教科書をつくる会」が、同市に計2400万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が14日、最高裁第1小法廷であった。
横尾和子裁判長は「著作者には、公立図書館で不公正な取り扱いを受けずに思想や意見を公衆に伝達する利益があり、その利益を侵害した廃棄行為は違法」と述べ、請求を棄却した1、2審判決を破棄し、損害額の認定のため審理を東京高裁に差し戻した。井沢氏らの逆転勝訴となった。
判決はまず、公立図書館が住民に図書館資料を提供する公的な場であると指摘。「著作者の思想・表現の自由が憲法で保障されていることに照らすと、公立図書館に置かれた著書によって思想などを伝える利益は、法的保護に値する人格的利益と言える」との初判断を示した。そのうえで、司書による廃棄は、独断的な評価や職員個人の好みに基づくもので、著者の利益を違法に侵害したと結論づけた。
判決などによると、司書は2001年8月、書物の保存期間などを定める市の廃棄基準に違反して、107冊の蔵書を捨てた。このうち約30冊が、「つくる会」編の「国民の道徳」や、同会に賛同して教科書執筆に加わった井沢氏や外交評論家の岡崎久彦氏ら原告の著書だった。司書は、02年5月、減給の懲戒処分を受けている。
1審・東京地裁と2審・東京高裁は、「個人的な好き嫌いの判断で市有財産を不当に損なったのは違法」と指摘したが、「いったん購入した書籍を廃棄しても、著者の権利を侵害したとは言えない」として、いずれも請求を棄却していた。
「つくる会」の教科書を巡っては、13日に市町村で初めて採択した栃木県大田原市で、反対派の抗議活動が行われるなど、採択の是非が各地で議論を巻き起こしている。
船橋市の話「判決内容を十分検討したうえでコメントさせていただきたい」
(読売新聞) - 7月14日13時29分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050714-00000104-yom-soci