2005年07月12日(火) 00時00分
悪質な住宅リフォーム 相談112件と急増(朝日新聞・)
全国で、高齢者を狙った悪質な住宅リフォーム被害が相次ぐ中、県内にも認知症の高齢者らが標的になった工事被害が次々と報告されている。県民生活センターなどの調べでは、04年度に寄せられたリフォーム関連の相談件数は、2年前の81件から大きく増え112件に上った。うち65歳以上の人からの相談は67件と半数以上を占めており、高齢者が悪質業者の標的になっている実態が浮き彫りとなった。
盛岡市内の女性(74)宅に「配水管の無料点検をします」と、仙台市内に本社があるリフォーム会社のセールスマンが訪ねてきたのは昨年6月末のこと。女性は一人暮らしで、医師から認知症との診断を受けたばかりだった。
「配水管がつまりそうだから、きれいにしておきましょう」。男の言葉に乗せられるままに、女性は配水管の清掃契約を結んだ。代金は3150円。業者はその翌日から連日女性宅に営業マンを送りこんだ。
配水管清掃の翌日には18万円、翌々日に71万円、次の日は25万円——。床下の基礎補強工事などの契約を立て続けに結んでいった業者は、契約書へ女性のサインを求める際、工事代金も女性に記入させていた。後から、指摘された場合でも、納得ずくの契約であると証明させるための手口だ。
女性のもとには、その後も同じ業者から次々と計5人の営業マンが訪れた。今年3月までに女性が契約した工事件数は10件、契約総額は430万円に上った。今年5月、女性の知人が、度々工事が入っているのを不審に思い、盛岡市の消費生活センターに連絡したことで発覚した。
女性の家を調査した2級建築士の小笠原浩次さんは、床下をのぞいて驚いた。本来ビニールシートを敷いてから置かなければいけない調湿剤が、土の上に直接置かれ、地面の水分を吸いこんで、ジメジメと湿気を放っていた。基礎補強工事では、用途違いの防水セメントが基礎のコンクリート部分に薄く塗られていた。小笠原さんは「本来の用途と違う場所に使われており、床下の補強には全く役立たない工事」と診断した。 工事代金も法外なものだった。女性宅の床下には、床を支えるためのプラスチック製の束が本ほどつけられていた。1本千円程度で売られているものだが、25万円の工事契約が結ばれていた。「相場の10倍は高い。場当たり的で無計画。必要性のない工事で占められていて、技術的にもプロの仕事とは全く言えない」と小笠原さんは憤る。女性は「男の人が次々と来て、いろんなものをつけていった」と話し、被害の意識はないという。
「悪質商法に負けないまちづくり」を宣言している盛岡市では、老人会で講習を開いたり、弁護士会や警察などの関連機関との情報交換を密にするなど、対策に乗り出している。この工事でも、市から連絡を受けた弁護士が、代金の返還を求めて業者と交渉中だ。
しかし、業者そのものへの対応は進んでいない。経済産業省によると、04年度までに悪質業者に業務停止命令などの行政処分をしたのは全国14都道県にのぼるが、岩手県ではいまだ実績がない。行政処分の権限は県のみが持つため、市町村の関係者からは「県が積極的に悪質業者の芽をつもうとしなければ始まらない」との不満の声も上がる。経済産業省でも「一部の県では取り組みが必ずしも十分でない」と指摘する。
これに対して、県立県民生活センターでは「これまで行政指導、勧告をするほどの事例がなかったと認識している。県民の皆さんに情報をあげていただき、今後は対処していきたい」と話している。
悪質リフォームの相談は、県民生活センター(019・624・2209)まで。
(7/12)
http://mytown.asahi.com/iwate/news02.asp?kiji=8255
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