2005年07月11日(月) 16時18分
28年後の実名報道は適法…名古屋高裁判決(読売新聞)
「ニセ電話事件」と「宮本身分帳事件」にかかわったことで弁護士資格を失い、その後の特赦で資格を回復した鬼頭史郎・元判事補(71)が、愛知県弁護士会に入会を申請したことを報じた記事でプライバシーを侵害されたとして、読売新聞社に対し損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11日、名古屋高裁であった。
熊田士朗裁判長は「弁護士会入会申請の報道に際し、実名で罷免歴や前科を記載することは必要で、違法性はない」と述べ、30万円の賠償を命じた1審判決を取り消し、読売新聞社側逆転勝訴を言い渡した。
この訴訟では、発覚から28年が経過した著名事件の実名報道が許されるかどうかが争われた。判決は、「歴史的、社会的事件の当事者の社会的活動に対する評価のため、実名による前科報道が許される場合がある」として、本件ではプライバシー保護より報道が優先するとの判断を示した。
問題となったのは、昨年7月1日付の読売新聞朝刊の記事。記事は、鬼頭元判事補が愛知県弁護士会に入会を申請したことを報じ、その中で元判事補が、<1>ロッキード事件の際、検事総長の名をかたって当時の三木首相に電話した1976年の「ニセ電話事件」に関連して裁判官を罷免され、法曹資格を失った<2>85年に弾劾裁判所が法曹資格を回復させたが、その後、宮本顕治・日本共産党中央委員会幹部会委員長(当時)の身分帳を裁判官の正当な職務を装って不法に閲覧した「宮本身分帳事件」で有罪(職権乱用罪)が確定し、法曹資格を再び失った——などと報じた。
1審の名古屋地裁は、「ニセ電話事件と宮本身分帳事件に対する社会の関心はほとんどなくなっており、実名で罷免歴や前科を報道したのはプライバシー侵害に当たる」とした。これに対し、控訴審判決は前科報道をめぐる最高裁判例を踏襲した判断を示した。
読売新聞東京本社広報部の話「妥当な判決と受け止めています。実名による前科報道について、適法の範囲を示した司法判断で報道界全体にも意義があると考えます」
(読売新聞) - 7月11日16時18分更新
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