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岐阜県に住むA子さんの自宅前に五月、パトカー数台がサイレンを鳴らして到着した。A子さんの家で「殺人事件が起きた」という偽通報を受けての出動だった。
A子さんは三社のヤミ金融から高利の借金をして返済に苦しんでおり「めちゃくちゃにしてやるぞ」などと脅しの電話を頻繁に受けていたところだった。嫌がらせは続いた。子どもが通っている学校には「子どもを迎えに行くぞ」と脅しめいた電話が…。A子さんの夫の勤務先には、消防車約十台が駆けつけた。
当初は、四月に一万円を借りただけ。大手消費者金融の広告にそっくりのダイレクトメールが自宅に届き、ヤミ金融と気づかずに電話してしまったのだ。返済は一週間後。利息だけで一万五千円。年利約7800%という、とてつもない違法金利だった。
その業者への返済に苦しんでいるところに、別のヤミ金融業者から誘いの電話。さらに別の業者からも。法定金利分をはるかに上回る利息を返済しても請求は続き、脅しがエスカレートしていった。A子さんは相談機関を通じて、警察にも連絡したが、取り立て電話はその後もしばしばかかってくるという。
こうした嫌がらせは、珍しいことではない。
名古屋市内で婦人服店を経営するB子さんは「一時は、店を続けるのも大変でした」と話す。
従業員女性の元夫がヤミ金融業者から借金し、業者が元夫を精神的に追いつめるために、店を標的にしたのだ。
昨年一月、「足の悪い人が閉じこめられた」という通報を受けて消防車が駆けつけた。ことし五月には「強盗が店内にいる」との110番で、パトカーが来た。六月上旬には「爆弾をしかけます」というファクスが店に届き、警察が周囲を捜索して近所の人たちが一時避難する大騒動になった。この日、店に葬式用の花も届いた。
業者らは電話口で店員の女性たちにも暴言を吐き、休職した店員も。B子さんは「泣き寝入りは絶対に嫌。警察に捕まえてほしい」と話す。
大阪市の「いちょうの会」の事務所に先月相談に訪れた七十歳代のC子さんの例もすさまじい。
業者は電話で激しく返済を迫るだけでなく、C子さんの家にも取り立てに訪れた。消防車の出動は計四回。パトカーが一回。それに加え、C子さんの長女の家には、棺おけが届いた。長女の夫の会社や二女の家にも嫌がらせは及んだ。
埼玉県桶川市の「夜明けの会」の電話相談員は、六十代の女性の自宅に消防車やピザの宅配、タクシーなどの偽電話をしていた悪質業者と電話で激しくやりあった。その十五分後、「火事」の連絡を受けて、事務所に消防車がやってきた。被害者を救済しようとした弁護士や司法書士に嫌がらせするケースも各地で報告されている。
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こうしたヤミ金融業者の横行に、警察の捜査の手はなかなか回らないのが実情。所在をつかみ、違法な高金利や取り立てを立証するのが難しいからだ。
「かといって、警察や消防をなめ切った行為を野放ししていいのか。粘り強く捜査してヤミ金融業者を摘発してほしい」と被害者たちは訴える。
愛知かきつばたの会事務局長の水谷英二さんは「ヤミ金融の被害に遭った人は救済団体や警察に急いで相談すべきだ。そうしないと、精神的にとことん追いつめられる」とアドバイスする。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050707/ftu_____kur_____001.shtml