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2005年07月07日(木) 00時00分

明治安田生命 『顧客第一』はどこへ 東京新聞

 支払うべき保険金や給付金を払わなかった明治安田生命保険。契約者にとって信じられない詐欺的行為は保険そのものを窮地に立たせた。速やかなトップ交代と情報公開が信頼回復の前提だ。

 契約者にとって生命保険は預貯金と同じ重要な金融資産である。二〇〇五年三月末の個人保険の保有契約額は一千兆円を超える。いざというときに保険金が出なければ保険をかけ続ける意味がない。今回の不祥事はそんな素朴な疑問を招いた。

 金子亮太郎同社社長は今秋にも辞任し、今月十五日に就任する予定の生命保険協会長も辞退するという。当然だ。社長や担当役員を含めた経営陣の交代は、秋まで延ばさず早急に行うべきだ。

 同社は今年二月、保険業法違反の販売活動をしたとして金融庁から二週間の業務停止命令を受けた。「告知義務違反」や「詐欺無効」という保険契約解除の規定を乱用したためだ。その後の社内調査であらたに〇四年度分だけで九十件の不適切な不払いが判明した。さらに過去四年間にさかのぼると一千件を超す不払いがある見通しという。

 なぜこんなことが起こったのか。一連の不祥事は旧明治生命で頻発している。金子社長は明治生命時代の〇二年春に中期経営計画を策定し、保険金の支払い査定を強化する方針を打ち出した。保険契約者が死亡した際、査定を厳しくして保険金支払いをできるだけ減らす「死差益」拡大路線だった。こうした方針が、収益至上主義をまん延させた。

 金子社長にしてみれば〇四年一月の安田生命との合併を前に、営業力や財務体質の強化をはかっておきたかった事情があろう。だが一番肝心なのは契約者の信頼だ。

 生保業界自体が厳しい立場に立たされている。ほかの保険会社では同じような不払いはないのか。各社とも真剣な洗い直しが必要だ。また個人保険だけでなく、企業や官庁などが対象となっている団体保険も含めた点検を急ぐ必要がある。

 金融庁には明治安田生命への検査を厳しく行ってもらいたい。違法性が明らかになった場合は再度厳しい行政処分を行うべきだ。また生保商品について厳しく監視し、契約者にわかりやすい説明が行われるよう指導してほしい。

 同社は業務停止命令を受けた際、「顧客第一主義の徹底」を契約者に誓った。今回は内部管理体制の改革や業務改善計画の推進などを表明している。もはや方針表明の段階ではない。直ちに実行することが信頼回復の第一歩である。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050707/col_____sha_____002.shtml