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2005年06月19日(日) 03時05分

東武竹ノ塚駅踏切事故、1年前もミス 駅長、本社に虚偽報告産経新聞

書類、隠蔽の疑い
 東京都足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅踏切の四人死傷事故で、踏切保安係の小松完治被告(52)=業務上過失致死傷罪で公判中=が事故の約一年前に起こした遮断機操作ミスに関し、駅長(56)が警視庁捜査一課の事情聴取に「虚偽の内容を東武鉄道本社に報告した」と供述していることが十八日、分かった。 
 捜査一課は駅長や本社側の立件可否の焦点となる「予見可能性」を判断する上で、このミスを最重視。駅長らによる事実の隠蔽(いんぺい)が四人の死傷につながった疑いがあるとみている。
 調べでは、ミスは昨年四月九日午前七時すぎに発生。遮断機操作をしていた小松被告が、竹ノ塚駅始発の上り電車が発車する直前、別の電車と勘違いして出発まで時間があると判断、安全ロックを解除して遮断機を上げた。歩行者が踏切内に進入したが、運転士が異常に気づいて緊急停止したため、事故はなかった。
 駅長は口頭で小松被告を厳重に注意したが、踏切業務を指導する本社運輸部運転課長と駅を統括する営業部管理課長にあてた二通の報告書には「遮断機を上げた」事実を隠し、「通行人がいたため遮断機を下ろすのに手間取り、電車の発車を三十秒遅延させた」とする虚偽の内容の報告書を提出していた。駅長は事情聴取に対し、「自らの保身と部下の立場を守るために虚偽の報告をした」と供述している。
 また、報告書とは別に駅長から直接、ミスの「真相」を聞いた本社営業部管理課の担当者は、課長ら上司に事実を報告していなかったことも新たに判明。この担当者は竹ノ塚駅の駅長経験者で安全ロックの解除が常態化していたことなどを熟知しており、捜査一課は駅長らをかばおうとして報告しなかったとみている。
 さらに、二通の報告書は捜査一課による東武本社の捜索で見つからず、捜索後に担当者が「机の中にあった」などとして一通を提出してきたほか、もう一通は異例の三度にわたる本社の捜索でも発見されず、「隠蔽」された疑いもある。
 捜査一課では、虚偽の報告書が作成された経緯の詳細を調べるとともに、東武本社の「安全姿勢」に問題があった可能性もあるとして、踏切の運用と危険性の認識について本社側がどの程度把握していたか慎重に捜査を進めている。
 東武鉄道広報センターの話「(虚偽報告など)捜査に関することについてはコメントできない」
     ◇
 予見可能性 過失の有無の判断基準となる法律用語。ある行為を行う際、被害の発生を見通すことができた場合、その人物に回避する義務が生じる。回避義務を怠ると過失があったとみなされ、民事、刑事上の責任が問われる。
 東武鉄道踏切4人死傷事故 3月15日午後4時50分ごろ、東京都足立区西竹の塚の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの37号踏切内で、保険外交員、宮崎季萍さん=当時(38)=と主婦、高橋俊枝さん=同(75)=の2人が太田発浅草行きの上り準急電車(6両編成)にはねられ死亡。女性2人も重傷を負った。現場は「開かずの踏切」対策のために保安係が手動で遮断機の上げ下げを行っており、係員が誤って遮断機を上げたのが原因。事故後、東武などは住民の署名運動を受け、年度内に現場近くに歩道橋を設置する方針を決めている。
(産経新聞) - 6月19日3時5分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050619-00000013-san-soci