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高校生の携帯電話所持率が9割を超え、携帯電話から出会い系サイトにアクセスして、不当請求などの被害に遭う例も増えている。東京臨海副都心で開かれた「New Education Expo2005」(NEE)では、パネルディスカッション「携帯電話・インターネットの危険から子どもを守ろう−−情報モラル教育とどうあるべきか」が行われ、群馬大学の下田博次教授、千葉県柏市立南部小学校の西田光昭教諭、東京都北区立赤羽台西小学校の野間俊彦主幹が、子供の現状や対策を話し合った。【岡礼子】
◇子供の現状
下田教授は「高校生は、携帯電話を“何でも出てくるメディア”と呼んでいる。例えばカラオケをしていて終電車がなくなったら、出会い系サイトで『車で送ってくれる人』を探せば、出てくる。『ふぐをご馳走してくれる人』も現れる−−といった具合だ。しかし、そこにはリスクがある。大人は出会い系サイトを売春の相手を探すメディアだとしか思っていないのではないか。子供にとって、出会い系サイトは売春相手を探すメディアではないことを分かった上で、子供に語りかける必要がある」と、説明し、携帯インターネットは「見知らぬ大人と直接のコミュニケーションが可能で、実際に接触する機能がある」「有害情報にダイレクトにアクセスできる」−−など、マスメディア時代とはまったく違う特性を持つと説明し、「子供にとって携帯電話を『天狗の隠れ蓑』のようなもの。携帯電話によって子供の犯罪、非行は大人の目から見えなくなっている」と強く訴えた。
◇小学校での取り組み
携帯電話の所持率が1割〜3割の小学校では、どう教えているのか。西田教諭は「モラルは日常生活が基本。普段、人と人とのコミュニケーションでやっていることは、ネットワークを使ったコミュニケーションでも同じだ」と話した。ウェブページなどを作るために、ほかの人が撮った写真を使うとき、子供たちに「写真は誰のものか」と聞くと、(1)撮った人のもの(2)みんなのもの(3)自分のもの−−の3つの答えが出てくる。だが、「著作権」という言葉を知っている子供は、「撮った人のもの」という意識があるという。西田教諭は「ちょっとしたことでも、話しておくと子供が意識するようになる」と話し、「小学生は『法律で決まっている』と話すと、とても大事なことだと考える。高学年になると好奇心が出てくるので、3、4年生で指導する方がいい」と指摘した。
西田教諭は、学校ではこれまで、パソコンの使い方を指導してきたと述べ、「子供がネットワークを使う場は学校だと考えられていた。学校なら履歴を調べることも指導もできるが家庭では難しい。家庭での利用が増えてきたら、学校でどんなことが起きたかを家庭に知ってもらうことが必要になる」と話した。
野間主幹も「携帯電話を持っている子と持っていない子がいるなど、子供の環境がばらばらな場合、モラルやルールを教えても、使っていない子にとっては関心がない」と指摘し、「家庭との連携が必要だ。授業で教えたことを、『情報モラルだより』などで家庭に伝え、それまで携帯電話を持っていなかった子供が使い始めたときには、保護者に『前に学校で教わったでしょう』と言ってほしい」と話した。赤羽台西小学校では、保護者への説明会も行っており、その結果、保護者が子供の携帯電話に迷惑メールがこない設定をするようになるなど、意識が変わってきたという。
◇指導のあり方
野間主幹は「赤羽台西小では、6年生の授業で、『大人になった時に、今のようなネット社会にしないようにしよう』と教えている。小学生は素直に聞くが、高校生の指導は難しそうだ。でも、小学生もすぐに今の高校生と同じような状況になるだろう」と語り、高校生にどう教えているのか、下田教授に尋ねた。
下田教授は高校生に、「親になったとき、自分の子供が同じことをしていたらどうする?」と語りかけていると話し、「講演に行くと、携帯電話のことをまじめに話してくれたのは初めてだと言われることもある。高校生はリスクに気がついている。携帯電話の危険性についての話は、彼らにとってメリットになるはずだ」と訴えた。
西田教諭は「携帯電話の便利さにばかり目がいっていると、こんなに便利なのになぜいけないのか、という話になってしまう。価値基準をどうつくっていくかがポイントで、小さい時からくりかえし教えていくことで、子供たちの中に価値基準ができる」と話した。
携帯インターネットの問題を保護者にどう訴えていくか。西田教諭は「学校が子供の実態を知ることが必要だ。保護者は子供の問題を隠さないでほしい。保護者と学校が、子供の問題について情報を共有し、一緒に考えていけたらいい」と話し、野間主幹は「保護者は携帯インターネットについて、知識と意識をしっかり持ってほしい」と話した。また、下田教授は「携帯インターネットで、今起きている問題は親の責任だ」と強い口調で訴えた。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20050608k0000m040065000c.html