2005年06月02日(木) 15時50分
募金苦境、逮捕事件の余波 金額減り、「偽もの」非難も 「信頼失墜怖い」(産経新聞)
虚偽の求人広告で集めたアルバイトに街頭募金をさせていた職業安定法違反容疑でNPO(民間非営利団体)を名乗る団体の主宰者、横井清一容疑者(34)らが逮捕された事件の余波で、正当な活動を行っているほかの団体の募金額が減るなど、事件の影響とみられる現象が起きていることが二日、分かった。「偽の募金やろ」などと不当な非難を浴びるケースもあるという。
横井容疑者らが集めた数千万円の使途が不明になっており、他団体には「善意で成り立っている募金に対する信頼の失墜がこわい」などと不安や憤りが広がっている。連絡先を大きく表示するなどの対応策をとった団体も出ている。
海外での心臓移植を待つ和歌山県の小学二年、井辺美摘さん(7つ)の支援団体がJR大阪駅前で街頭募金を行ったのは、横井容疑者らの団体の問題がテレビなどで放映された後の三月中旬以降。募金は芳しくなく、団体会長の橘和延さん(61)は「事件の影響が出たかも」と顔を曇らせる。
橘さんは三年前に別の街頭募金を行ったが、今回集まった額はその七分の一程度。横井容疑者の団体も同じ大阪駅前などで難病の子供への支援などを名目にしていたことから、影響が大きかったとみられる。「自分たちが着ていたそろいの黄色いジャンパーが、蛍光色のジャンパーを着ていたあの団体と間違えられるのではないか」。メンバーからはそんな声も出ていた。
災害や病気で親を亡くした子供を支援する「あしなが育英会」(本部・東京)でも今春、関西地区の募金がここ数年で最少額に落ち込んだ。通りがかりの人から「(警察の)道路使用許可証を見せろ」「偽の募金やで」など、ひどい言葉を浴びせられたという報告もあがっている。
横井容疑者の団体が連絡先などを一切明示していなかったことが問題となっているため、同会では横断幕に連絡先の電話番号を大きく印刷。スタッフが募金の趣旨などを明確に説明できるように指導も徹底した。「募金は信頼だけが頼り。長年培った信頼が崩れかねない」としている。
また、山口県の山近展敬さん(26)の海外心臓移植に向け、四月から活動を始めたばかりの支援団体も、募金箱に山近さんの似顔絵や団体の連絡先を記載、団体の目的などを明確にした。募金箱には番号をつけ、募金の日時、場所、金額などを管理できるよう工夫した。代表の中部康典さん(66)は「善意に報いることを示したい」と説明する。
「赤い羽根」で知られる社会福祉法人「大阪府共同募金会」の古谷泰景事務局長は「募金団体がまともかどうかを区別するのは難しいが、規制するよりも募金の受け皿はたくさんある方がよく、どうすればいいのか」と戸惑っている。
(産経新聞) - 6月2日15時50分更新
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