2005年05月25日(水) 16時40分
悪徳リフォーム:80歳代の一人暮らし女性、700万円の契約−−福井 /福井(毎日新聞)
◇高齢者狙う訪問業者、言葉巧みに信用させる−−浄水器購入、床下補強など次々と
福井市内に住む80歳代の女性が、同じ訪問業者に勧められて住宅のリフォームを繰り返し、最終的に合計で約700万円を支払う契約を交わしていたことが、関係者の話で分かった。女性は認知症(痴呆症)ではないが一人暮らしで、近所に身寄りもなかった。福井市消費者センターは「業者が親身になれる雰囲気をつくり、偽の信頼関係を築いていったのではないか。悪質な話」と指摘。埼玉県で認知症の姉妹が全財産を失うなど悪質なリフォーム被害が相次ぐ中、県内でも高齢者を狙う手口に注意が必要になっている。【田辺一城】
「一人暮らしの母親が訪問業者と何度も改築工事の契約をしたらしい。約450万円分の領収書が見つかった。あと250万円支払う約束があるという。だまされているのではないか……」
昨春、県外に住む女性の娘が実家に帰省した際、約10枚の領収書の存在に気付いた。契約書類は一切ない。調べると、本当に必要だったのか疑わしい工事ばかり。価格も通常より高かった。
訪問業者の男は03年春に、初めて女性の自宅を訪れた。水道管を点検した後、管に取り付ける浄水用の「磁気活水器」を女性に勧めた。女性は3台購入し、約70万円を支払ってしまった。翌04年2月には、男が「活水器の様子を見る」と訪れ、なぜか床下も調査。「ひどくしめっている」などと指摘し、床下用の換気扇や柱の補強材などを約250万円で勧めた。女性は「地震の補強工事」と思い込んでいた。さらに4月、屋根のふきかえも頼んでしまった。
男は巧みな言葉で女性に近づき、「近く、3番目の子どもが生まれるんです」。プライベートな話に、女性は親近感を覚えたようだ。「一級建築士です」「教師の資格も持っている」などと、社会的に信頼させる言葉もあったという。
関係者は「女性は契約時の状況を聞いても忘れておらず、しっかり話せた」と話す。娘の助言もあり、契約書が存在しないことで、業者には内容証明で「書面不交付」を主張。認知症ではなかったが、女性は福祉施設に入ることを選び、判断能力の不十分な人を支援する「成年後見制度」を利用した。後見人となった司法書士が代理人となり業者側と交渉し、大半が返金されたという。
◇
福井市消費者センターのまとめでは、リフォーム工事に絡む相談件数は、▽02年度14件(うち70歳以上6件)▽03年度12件(同3件)▽04年度22件(同9件)——と、昨年度は全体数がほぼ倍増。特に高齢者の被害が前年の3倍に急増している。
◇一人で契約しないで−−消費者問題に詳しい島田広弁護士(福井弁護士会)の話
ここ数年、全国的によくあるケース。高齢者は自分一人で契約せず、先に、家族と電話でも連絡することが必要。もし契約しても、クーリング・オフもあるので、早めに(司法書士や弁護士、消費者センターなどの)専門家に相談することが大切です。
5月25日朝刊
(毎日新聞) - 5月25日16時40分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050525-00000181-mailo-l18