2005年05月21日(土) 03時07分
<不正チューナー>CATV「無料視聴」被害70億円(毎日新聞)
ケーブルテレビ(CATV)局に料金を払わないまま有料番組のスクランブル(暗号)を解除して見ることができる「不正チューナー」が、インターネット上などで公然と売られている。販売行為は不正競争防止法違反だが、罰則規定がないため、実質的には野放し状態となっている。「無料視聴」によるCATV局側の被害は年間70億円以上と推計されており、CATV二十数社は来月にも、販売業者数社を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす方針だ。
日本ケーブルテレビ連盟によると、不正チューナーは03年秋ごろから、ネット上や電器店、住宅にチラシを配って注文を受ける方法などで売られ始めた。1台2万円前後で、現在では20種以上の商品15〜20万台が出回っている。CATVがデジタル化された地域では使えないが、全国で7割弱のCATV局はデジタル化されておらず、不正チューナーで料金を払わずにすべての有料番組を視聴できるという。
99年の不正競争防止法改正で、こうした不正チューナーの販売や輸出入は、試験や研究目的の場合を除き禁止された。しかし、販売業者に対する差し止めや損害賠償の請求権は認められたものの、罰則規定は設けられず、警察などによる取り締まりは行われていない。
販売業者の多くは、ホームページで「アダルトもスポーツ番組もすべて無料」と宣伝。「研究として利用するなら販売も購入もまったく違法性はない」「罰則もない」と強調している。
ネットオークションへの出品も多く、最大手のヤフーオークションには常時100点以上が出品されている。同社はガイドラインで、法律で販売を禁止されている商品は出品削除対象と決めているが、「銃弾など一目で違法と分かるものならすぐに削除するが、チューナーは違法性の判断が難しい。購入者が研究目的で利用している可能性もあり、自主的に削除はできない」と説明する。現在は同連盟から要請のあったものだけを削除しているという。
スクランブル解除が不可能とされるCATV局のデジタル化には、時間も資金も必要だ。同連盟の山本学・業務管理課長は「必死に活動しているが、民事訴訟では限界がある。著作権法違反のように警察が摘発に動かなければ、違法な業者がのさばるだけ」と、新たな法規制を求めている。【川上晃弘】
(毎日新聞) - 5月21日3時7分更新
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