2005年05月19日(木) 03時06分
<リフォーム被害>業者間に名簿流出 幽霊会社で再契約も(毎日新聞)
埼玉県富士見市の認知症の老姉妹が訪問リフォームなど16社に不要な工事を繰り返され、全財産を失った問題で、うち1社の社員が退職後、別の2社でも姉妹から契約を取っていたことが分かった。2社は実体のない幽霊会社で、工事すらしていない可能性がある。一方、社員が在籍した会社も「受注できたら15%のリベートを支払う」条件で、同業者に顧客名簿を貸し出していた。判断力のないお年寄りに、業者が群がる仕組みの一端が浮かび上がった。
姉妹と契約を繰り返していたのは、03年に東京都内のシロアリ駆除会社を退職した元契約社員。市の依頼で姉妹宅を調べたバリアフリー住宅研究のNPО(非営利組織)「ピュアライフ・ネットワーク」が、同社の工事申込書と社名以外そっくりの申込書が別に2社分あり、担当者名も同じだったことから気付いた。駆除会社は16社中、最多の2500万円分の工事を受注している。
経営者によると、この社員は同社で8カ月働き、姉妹を担当した。退職後、社内から姉妹との契約書がなくなっていた。経営者は「契約書は持ち出された可能性があり、だとすると、他の顧客名簿もコピーされた恐れがある」と言う。
その後、元社員が別の2社名義で姉妹と結んだ契約額は計166万円分。内訳は「一式」などと書かれ、工事個所と照合できないようになっていた。2社は所在地も電話番号も同じで、記された東京都西多摩郡内の地番は貸家と山林だった。貸家に住む夫婦は「そんな会社のことは全く知らない。うちの電話になぜかリフォームの問い合わせが来るので、気味が悪いと思っていた」と話した。
一方、シロアリ駆除会社も00年ごろ、同業者に顧客名簿を貸し出していたことを、経営者が明かした。当時、既に姉妹は顧客だったが「貸出先は姉妹とは契約していない」と釈明。しかし業者名は「言えない」とし、貸し出し後の流出の可能性については「何とも言えない」という。
富士見市の調査では、姉妹との工事契約は、社員が退職した03年以降に急増し、シロアリ駆除会社と幽霊会社を除く13社中11社が、この時期に最初の契約を取っていた。市は、この元社員が姉妹宅への業者集中にかかわっているとみて、契約書類を精査し、業者間の関係を調べている。【扇沢秀明】
<埼玉・老姉妹リフォーム被害問題>
認知症(痴呆)の80歳と78歳の姉妹宅が競売にかけられたことに近所の人が気付き、市に通報して発覚した。訪問リフォーム業者など16社が、床下や屋根裏などに耐震金具や換気装置取り付けなどの工事を繰り返し、計約5000万円を請求。姉妹は老後の蓄え約4000万円を失ったうえ、信販会社の申し立てで家も競売にかけられた。しかし発覚後、市の請求で競売は中止され、判断力のない姉妹に代わって契約無効などを申し立てる「成年後見人」の選任手続きも開始。県警も調査に乗り出し、料金返還を申し出る業者も出ている。
(毎日新聞) - 5月19日3時6分更新
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