悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
「どうしても明日八時までに新しい名刺が要るんです」「分かりました、どうにかしましょう」。太田印刷では、たとえ東京からの注文でも、注文を受けた日の翌日に品物を届けることができるという。最短のケースは、夕方注文を受けて翌朝届ける。その上、有料であることが多い見本版の作成も無料だ。
そんなサービスのよさに、インターネットを通じて日本中から注文が集まる。今や売り上げの三分の二が東京からの注文という。
太田印刷は、長谷川清さんが一九八〇年、金沢市の西約六キロ、白山市(旧松任市)に設立した。地元企業や大手の下請けなどから注文を受けて、あぶらとり紙や名刺、封筒などを印刷してきた。代表の清さんと、妻で専務の美知子さん、一人の従業員の三人と、二人のパートで細々と頑張ってきた。
ところが、九〇年代後半からだんだん注文が減り、ついには大手でお得意さまだったガソリンスタンドの仕事もなくなった。「このままではだめだ。何かしなくては」と思った美知子さんは、金沢市の企業などを回ったが、古都ならではのしがらみも多く、新規注文はほとんど取れなかった。
そんな時、娘たちがパソコンを使って日常的にネットショッピングしている姿を見て、「インターネットで注文が取れないか」と思いついた。ウィンドウズで版下を作っていたこともあり、パソコンに対するアレルギーはなかった。
取りあえず、インターネットの懸賞サイトに、「五百人にあぶらとり紙プレゼントします」と掲載したところ、一日で二千件もの応募があった。そして一週間で六千件。思いがけない大きな反響に、美知子さんは「ここで勝負すべきだ」と確信した。
だが、今回応募してきたのは一般人ばかりで、商売相手にはならない。そこで目を付けたのが、受注がほしい企業と発注したい企業をインターネット上で結びつけるビジネスサイト「楽天ビジネス」だった。二〇〇一年七月、軽い気持ちで同サイトに登録したところ、初めは小さな仕事ばかりだったが、だんだんと大きくなり、半年で約一千万円の売り上げを記録。その後も、とんとん拍子で売り上げが伸びていった。「まさかここまで売り上げが伸びると思わなかった」
そのうえ、一度注文した企業は、その後次々と注文してくれる。このため「これ以上新規顧客を抱えたらきめ細かなサービスができなくなる」という理由で、現在は顧客の開拓は控えている。「ネットに挑戦しなかったら、とうにパンク(倒産)しとる。パソコンって面白いね」と美知子さんは笑った。
そんな太田印刷の成功を見て、金沢市にある嘉永五(一八五二)年創業の老舗の紙問屋「角谷商店」(従業員三十五人)も〇二年二月、楽天ビジネスに登録した。
同店の石倉奨営業部長代理は「太田印刷を見てすごいなと思った。『これはやれる』と思ったので、稟議(りんぎ)書を書いた」という。ネットからの注文は順調に伸び、今や三十億円の売り上げのうち約一割がネットからだ。「ネットではカタカナの企業が多く、私たちのような屋号は逆に目立つ。それもよかった」と石倉さん。中島直喜常務は「ネットによる売り上げはもっと増えていいと思うし、増やさなくてはいけない」と考えているという。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20050516/ftu_____dgi_____000.shtml