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昨年2月、埼玉県に住む40歳代の男性が、自宅で飼っていたハムスターに左手の指をかまれた。
急にせき込み、妻が気づいた時には、男性はすでに意識がなかった。救急隊が駆けつけた時には心肺停止状態。救命救急センターに運ばれたが、治療のかいなく亡くなった。
男性は、その4、5年前からハムスターを飼っており、それまでも数回かまれたことがあるという。
男性の臓器や血液を詳しく調べた結果、傷口からハムスターの唾液(だえき)が入り、体が過剰に反応、短時間に強いアレルギー症状が現れる「アナフィラキシー・ショック」を引き起こしたことが分かった。
ハムスターによるアナフィラキシー発症数について正確な統計はない。ただ、動物のアレルギーに詳しい東京医大第3内科助教授の新妻知行さんが、専門誌や学会での報告例を調べた結果、1997年以来、発症は全国で22人にのぼり、この男性が死亡したほか2人が重症だった。8人は、もともとアレルギー性の疾患を持っていなかった。
背景にはアニメの影響によるペット人気があり、増えているとみられる。一方、海外ではほとんど報告例はないという。
アレルギー症状の原因となる抗原として推定されるのは、ハムスターの上皮(フケ)や唾液に含まれるたんぱく質。空気中に舞った上皮が口や粘膜を通して、あるいはかまれて唾液が体に入ると、抗原から生体を守るための抗体ができる。2回目以降に再び抗原が入ると、抗体が反応してアレルギー症状が起きる。
かまれた場合は、抗原が血流に乗って全身に運ばれるため、アナフィラキシーになる危険性が高い。
猫や犬によるアレルギーもあるが、ペットでアナフィラキシーに至った報告があるのはハムスターやネズミ類だけだという。「まだ解明されていないが、ハムスターは犬猫よりアレルギーを引き起こす力が強い印象がある」(新妻さん)。
もっとも、症状が現れるのはハムスターを飼う人の一部。新妻さんは「飼って半年から1年たって、せき込みや目のかゆみなどが出たら、アレルギーの専門医に診てもらうことが大切」と話す。喫煙者は、ハムスターによるぜんそくを起こしやすいという。
ハムスターに関する著書がある獣医師の斉藤久美子さんは「ハムスターはもともと性格が穏やかな動物。でも、上や背後からつかまれたり乱暴に扱われたりするとストレスになり、かむことを覚える。下からすくい上げるように、優しく抱いてあげて」と話している。
生物によるアナフィラキシー 最も多く報告されているのはハチ刺され。1度刺されるとハチ毒に反応して抗体ができ、2回目以降に発症する。毎年20〜30人台の死者が出ている。ハムスターと同じげっ歯類のネズミや、ヘビ、ダニ、クラゲでも報告例がある。