2005年05月02日(月) 16時51分
追跡・静岡:静岡市立小・中のPCから個人情報流出 最大3900人分 /静岡(毎日新聞)
◇“廃棄物”へ無対策−−問われる認識の甘さ
静岡市清水区の市立小中学校のパソコン(PC)から4月21日、個人情報が流出していたことが明らかになった問題で、電話をかけてきた匿名の男が静岡市教委に対して「犯行」の内容を具体的に伝えていたことが分かった。市教委はこの内容を基に、PCからの情報流出の可能性が高いと判断した。静岡市は昨年7月、情報保護の考え方をまとめたが、廃棄PC内の情報管理についての具体的ルールは定めていなかった。流出したとみられるのは約3900人分の児童、生徒の情報。中には成績や画像なども含まれている。より慎重な姿勢が求められる市教委の情報保護についての認識の甘さが問われそうだ。【吉崎孝一、写真も】
■語られた「手口」
「外においてあったPCのハードディスク(HD)から情報をとった」。4月14日、男は電話口に出た市教委幹部に、産廃業者の敷地内に置いてあったPCからHDを盗み出したことを語ったという。幹部は「冷静ではいられなかった」と振り返る。前日の13日に、男は小中学校の個人情報を持っていると市教委に伝え「5万円で買い取らないか」と2度にわたり持ちかけていた。翌日、再度電話をかけてきた男に幹部が金を支払わないことを告げると男は「あきらめる」と話したうえ、「もし自分が生徒の保護者だったら、こんな情報が流れたらいやですよ」と情報管理の厳正化を求めたという。
その後の市教委の調べで、流出したとみられるのは、小中学校5校などで使われたPC6台にあった情報で、リース会社に返却され、産廃業者の手に渡っていた。市教委は男の言う通り、業者がこれらを屋外に保管していた際にHDが盗まれたとほぼ断定し、清水署に届け出た。市教委によると、これらのPCは教員らが成績処理などに使う共有のもの。00年度から5年間使用され、5校のPCに蓄積された情報は在校生が約1800人分、卒業生が約2100人分に上る。
■上書き処理せず
市教委はPCを廃棄する際に、データを削除するファイル処理をするよう各校に指示していた。しかしファイル処理だけではHDの情報は残り、いつでも復元できる。このため、復元不能にするには専用のソフトで無意味な情報を何度も上書きすることが必要。市教委もファイル処理では十分でないと認識していたことを認めたうえで「返却したPCは再利用されないとわかっていたが、リース会社の所有物のため上書き処理をしなかった」と釈明する。しかし県庁では、リースPCでもHDへの上書き処理をしたうえで返却することを徹底している。ある自治体の担当者も「廃棄PCのHDへの上書き処理は常識になりつつある」と話す。静岡市では個人情報保護についての考え方を規定した「情報セキュリティポリシー」を昨年7月に定めたが、具体的な情報管理の手順については決まっていなかった。市情報政策課は「今年度中に具体策を決めるところだった」と遅れを認めた。市は今回の情報流出直後に、使用後のPCのHDには上書き処理するよう職員に通知した。
■保護者からは不満も
21日の緊急保護者会に出席した保護者の一人は「PCのことはよくわからないので、1時間弱の保護者会では理解できなかった。ただ不安だけが増した」と話す。また、市教委は情報流出の会見から6日が過ぎた27日に、該当する小中学校の卒業生約2100人におわびの文書を送付した。文書にはおわびとともに「流出した可能性のある情報の回収に努める」と書かれていた。文書を見た卒業生の保護者からは、「一度外部に流出した情報を、回収できると本気で思っているのか」と市教委の姿勢に疑問と怒りを投げかける声が上がっている。
5月2日朝刊
(毎日新聞) - 5月2日16時51分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050502-00000023-mailo-l22