2005年04月13日(水) 08時11分
暴行、認めぬ母も 聖神中央教会事件 「導き」と認識(京都新聞)
信者の案内で教会関連施設に入る府警の捜査員。内偵段階から多くの壁が…。
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信者の女児に牧師が性的な暴行を繰り返していた「聖神中央教会」事件は、主管牧師永田保容疑者(61)が女性暴行容疑で京都府警に逮捕されてから、1週間を迎えた。少女たちのむくな信仰心を利用した前例のない事件。宗教の壁に挑んだ府警の捜査をまとめた。
■信仰の壁
最初の被害相談が府警に寄せられたのは、昨年12月。聖神中央教会を舞台に、10年ほど前から、複数の信者の女性、少女が牧師から性的暴行を受けているとの内容だった。八幡署は、府警捜査一課と連携し、性犯罪対策に経験のある女性警察官を、被害少女からの聞き取りにあたらせた。
「地獄に堕(お)ちる」と脅された少女たちの心を開き、女性警察官が信頼関係を築くうえで障害になったのは、永田容疑者を信じ切っている保護者の存在だった。
性的暴行を受けた苦しみや苦悩を娘から聞かされても、母親が「それは祝福」「神の導き」といい、取り合わないケースもあった。
府警は、犯罪被害者対策室のカウンセラーを被害女児や家族にいつでも派遣できる態勢を取っており、被害届を出さずに教団にとどまる被害少女の保護者にも、引き続き協力を求めている。
■立証の壁
被害少女に永田容疑者が「これは祝福だ」「信仰を試した」などと、口止め工作をしていたとの情報を府警はつかんでいた。内偵段階で捜査員たちは、牧師が「宗教上の儀式だった」「同意があった」と反論することを懸念した。
府警捜査一課には、1992年の「法友之会」暴行致死事件で、信者を儀式で死なせた教祖らを逮捕したが、全面否認で実刑確定まで10年かかった経験があった。鹿児島地裁川内支部では今年2月、女子中学生の体を触り強制わいせつ罪に問われた神主に、「邪気を払う宗教上の行為だった」として無罪判決も出た。
女性暴行の罪は、13歳未満の女児に対しては、被害者への暴力や脅迫を要件としていない。府警は、犯行当時12歳だった小学生の女児への容疑を優先して捜査。ある捜査員は「小学生の証言は証明力が弱く、もろ刃の剣だった。子ども同士で目撃があったので、逮捕に踏み切れた」と振り返る。
■逮捕以後
永田容疑者の逮捕後、被害者の会や府警には、さらに複数の被害相談が寄せられている。捜査幹部は、当時13歳以上の被害者についても「『言うことを聞かないと地獄に堕ちる』といえば、脅迫にあたる」との見解を示し、少女や成人の被害者の余罪も立件を視野に入れている。
(京都新聞) - 4月13日8時11分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050413-00000000-kyt-l26